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リンコ

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 それを見た美代は唖然として、声を失くしたように棒立ちになってしまった。
 そこへ藤堂が、美代の後を追って入って来た。
「うわぁーーー!」
 彼はびっくりして、危うく腰を抜かしそうになったが、すぐ後ろの壁に寄りかかって、何とか身体を支えた。
「――な、何なんだ、これは……」
 彼がそう言うのも無理はない。そのベッドに横たわるモノは、美代が知っている弟の悠介の姿とは全く違う、変わり果てたモノだったし、藤堂に至っては、まるで人間とは見えないものなのだから……。
 その身体の下半身は布団に覆われて見えなかったが、上半身はパジャマを着ていた。
 美代にも見覚えのある悠介のパジャマだ。
 そして、そのパジャマの袖口から覗く手首から先と、首から上の部分は、見たこともないほど赤茶けて、人間の肌とは思えないモノに……。
 ――そう。例えて言うなら、それは木の皮のように幾重にも重なって、指先で触れればボロボロと剥がれ落ちそうな状態だった。
 頭の部分があることと、パジャマを着ていることから、辛うじて人間かな? と思えるが、それが無ければ、古い枯れかけの大木が転がっているとしか思えないような代物だった。それを呆然と見ていた美代が突然悲鳴を上げた。
「イヤァーーー!!」
 それまで、驚きのあまり止まっていた思考回路が突然動き出したのかも知れないが、その直後、せっかく活動を始めたにも関わらず、その思考回路は彼女の意識と共に、暗く深い闇の底へと、まるで渦に飲み込まれるように落ちていった。
 バタッ!
 膝を折り、崩れるように倒れる彼女を、スローモーションで見るように視界に捉えながらも、藤堂は動くこともできずにいた。
「あっ! 警察だ!」
 突然、我に返りそう叫ぶと、彼は携帯を取り出し、そのボタンを110と押した。
「はい、こちら110番です。事故ですか? 事件ですか?」
「あ、あのう、……そのう、えっとーー」
「落ち着いて話して下さい。何がありました? ――そちらはどちらですか? 詳しい住所を教えて下さい。――あなたのお名前は?」
 電話の向こうから聞かれることに、何一つまともに答えることができない。事故か事件かなんて聞かれても、この状況を何と説明すればいいんだ? 藤堂は頭の中で一生懸命考えていた。
「えっとー、男性がベッドで死んでいるようなんです。すぐ来て下さい」
 何とかそれだけ言えた。
「場所はどちらですか?」
 淡々とした声で再度そう聞かれて、今度は辛うじてその場所を教え、自分の名前を名乗ることができた。
 少しだけホッとして、思い出したように藤堂は美代に駆け寄った。
「川野さん、しっかりして下さい! 川野さん!」
 声を掛け揺すっても、彼女は目を覚ます様子はなかった。仕方なく藤堂は彼女を横抱きに抱え、リビングのソファまで運ぶと、そこへそっと横たえた。そしてその場にぐったりと座り込んだ。
作品名:リンコ 作家名:ゆうか♪