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天才飯田橋博士の発明

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8 おとこ鑑定装置




春がすぐそこまで来ている。しかし神楽坂舞子は浮かない顔をして昼食後のコーヒーを飲んでいる。

コンビニ弁当を食べ終えて、やはりコーヒーを飲みながら飯田橋博士は「また、失恋でもしたか」と言ってみた。

「はぁー、なかなか理想の男っていないものね。男らしくぱっぱっと物事を決めるのでいいなあと思ったら相手の気持ちを全然考えなかったりね」

「完璧なおとこなんていないと思うがねえ」

「友達の話だけどね、やたら浪費家でね、そんなに給料もらっているのかと思ったら三十代なのに、お母さんに毎月何十万ももらっていたりする人もいるのよ」

「羨ましい話だ」

「反対にね物凄いケチとかもいるしね、帯に短したすきに長しなのよ。例えば5分ぐらい、まあ30分でもいいんだけどね。おとこの鑑定装置って出来ないですかねぇ」

「う~む」

「ま、博士にはあまり期待していませんけどね」

「うむうっ、ごほっ」

「博士っ、コーヒー不味かったですか?」

「神楽坂君、そのおとこ鑑定装置というのを作ってみよう。ただし、将来のことは難しい。スパコンがなければ無理だ。いや、あっても難しい」

「そうでしょうね。いいんです。いくら何でも36迄には何とか……ん、あと3年。え~! いつの間にぃ」

「じゃあ、ちょっと工房にこもるからな」

博士が工房に入っていって、舞子はあっという間に過ぎてしまったここ数年を思い出していた。



『おとこ鑑定装置』は難しいようで、梅の花も散って、桜全線の話題がでて来る頃、「出来たぞー」と博士の声がした。舞子が振り向くと、もう博士が試作品を持って側に寄ってきた。

「本体が携帯電話の大きさになってしまったが、ワイヤレスでメガネと連動している。もちろんただのメガネではない。相手の表情筋や目の動きを解析する優れものだ。うん、これは天才にしか出来ない」

「博士、当然私がテストをすることになるんですわね」

「もちろんだ、私が男を鑑定してどうする」

「ははは、そうですわね。で、大きな欠点は?」

「今まで通り……だな。結果は神様も知らない」

「はぁ~」

「ああ、説明しよう。これが本体、これはバッグやポケットに入れておけばいい。メガネ、これはかけなくてはならん。各種情報をここから取り入れて本体に送る。今回も相手の頭の上に☆が現れる。4つで満点だ。ちょっとやってみるか」

舞子は博士から本体とメガネを受け取ってスイッチをONにした。さあ、博士は?と見ると博士は横を向いてしまった。

「博士、こっちを向いて話をしましょう」

「ああ、神楽坂君。今日はもう帰っていいよ。結果は一週間後ぐらいでいいよ」

博士はさっさと工房に入ってしまった。舞子は、そう言えばと博士のことを思い出した。シャイなのか癖か、博士の視線は相手の目を見ていなくて下の方を向いているか、何かをいじりながらの会話が多かった。


一週間後、舞子は怒った顔で博士の前に立った。

「博士、結論から申します。失敗作です」

「理由は」

「博士の作るものは当初の目的は達成できます。でも、いつも致命的欠陥が…」
舞子は、この世の終わりかと思うような表情になって声をつまらせた。

「ど、どうした。何も危険なことは無い筈だが」

「ああ、成る程と頷けるように☆が見えました。しかし、☆の多い人は既婚者でした。それに、私の顔がぁ、顔が何故か老け顔になってきましたぁ」




作品名:天才飯田橋博士の発明 作家名:伊達梁川