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天才飯田橋博士の発明

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9 【人生やりなおし装置】~博士の言い訳




飯田橋博士は、自分の気の向くまま発明・製作をしてきたのだが、人々は何を望んでいるのか調査しようということになった。そしてある日。

「博士、この前頼まれたリサーチが出来あがりました」

助手の神楽坂舞子が友人知人たちとまたその友人知人と広げて、リサーチした結果が集計され発表された。

「ああ、上位3位まででいいよ」

博士の言葉に舞子が、集計結果を読み上げた。

「先ず3位は【赤い糸が見える装置】。う~ん、私も欲しいなあ」

「2位は【会いたい人に会える装置】です」

舞子は、ここで盛り上げるように、間を置いた。博士も老け顔に似合わないくりっとした目を見開いて待った。

「そして第一位は~、なんと【人生やりなおし装置】でしたあ」

「う~~~ん、むむむ」
博士が視線を上に向けてうなっている。

「博士、全部無理そうですねえ」

「むむむむむ~」

「あ、チョコレートありますよ。頭を使う時にはいいんですよ」

「あ、貰おう」
チョコレートを食べながら、博士は「検討整理してみよう、2位はどっかのテレビ局でやってもらおう。1位と3位、まず1位だな」と言って工房に入っていった。



少し経って「もう少しチョコレート無いかな」といいながら舞子のもとへ博士がやってきた。かなり頭を使ったのだろうかと、舞子の視線は博士の薄くなった頭髪に行く。

「おいおい、どこ見てる。見るな!減るから」

「はいはい、ああ、まだ有りますよ。配られなかったチョコが」

自嘲ぎみに舞子が言うと、博士がびっくりしたように「今、何と言った」と尋ねる。舞子は何のことだろう思いながら、「配られなかったチョコ」と呟く。

「う~ん、配られなかった。なかった。使われなかった。使われなかった選択肢。使われなかった過去。う~~ん」
博士が呟きながら工房に戻って行った。


舞子は工房から博士の「ああ、だめだあ」と言う声が聞こえた。そうでしょ、皆が過去に戻って人生やり直ししてたら、今現在はどうなるのと思った。


数日後、コーヒーを飲みながら博士は舞子の前に無念の表情をして喋り始めた。

「神楽坂君、【人生やりなおし装置】は、くやしいが無理だ。使われなかった過去の選択肢、そのうちの印象的なものにはたどりつける。しかし、身体は過去には戻せない。しかし、転生装置は作れると思う。これも一種の人生やりなおしだけどな」

最後は、無理に自分を鼓舞するように言って、博士は残っていたコーヒーを飲み干した。

「そうですよ、過去に戻れるのは意識だけ。でも、博士ができるといった転生装置は作らないんですか」

「ああ、考えてもみたまえ、死んで新しい人に生まれ変わったって普通の赤ん坊と同じだ。自分が二度目の人生なのか三度目なのかわからないだろう。それなら作る意味がないだろうと思うんだよ」

「ああそうね、私も誰かの生まれ変わりかもしれないんだ。な~んだ、つまんない。博士、じゃ、【赤い糸の見える装置】をお願いしますね」
舞子はそういってから机の引き出しから、多数のチョコレートを取りだした。

「はい、これで頭をフル回転ね」

「おいおい、どれだけチョコレート買い込んだんだあ」




作品名:天才飯田橋博士の発明 作家名:伊達梁川