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天才飯田橋博士の発明

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14 バカにつける薬



飯田橋博士もさすがに今年の暑さには参っているようだ。脳味噌がだるい。
その頭で【バカにつける薬】というものを発明した。
さて、テストだ。しかし、助手の神楽坂舞子でテストをしてみるわけにはいかない。そもそも舞子は天然ボケぎみだがバカではない。博士は自分はバカではないと思っているので、自分が被験者になる発想は頭からなかった。

さて、どうしたものかと博士は薬をもて遊びながら考えた。

まてよ、人間はバカと利口に別れているわけではない。バカはどこにでもいる筈だ。医者、政治家、学者……誰でもバカな所は持っている。と博士は考えた。

じゃあ。誰だっていいわけだ。


「舞子君、君は自分をバカだと思うかね」
「博士ぇ、私が何か失敗をしましたか。失敗と言えば博士、博士は毎回毎回失敗の連続ではありませんか。バカは博士の方ではないですか」
この暑さに舞子も睡眠不足でいらいらしているようだ。

「ま、ま、舞子君、違うんだ。君は自分をどう思っているのか聞きたかっただけなんだ」
「博士、私はバカではありません。ところで手に持っているそれは何ですの」
「あ、これか新発明の薬なんだが、テストをどうしようかと思っていた所なんだよ」
「何の薬なんです?」
「ま、早い話が欠点をなくす薬かな」
「まあ、じゃ私がテストしてみますわ」
舞子は、もしかしたら自分の欠点が原因で結婚相手が見つからないのかという考えが頭に浮かび、その薬を受けとった。

小さな壜のキャップを外すと、それを一気に飲み干してしまった。

「あ、あああ~」
博士が大きな声をあげた。

「博士、どうしたんですかー大きな声を出して」
「あああ、その薬は飲むのじゃなくて、つけるのだった。ああそれに、暑さでぼ~っとしていてデータを記録するのを忘れてしまっていたー」

博士は、やはり自分で最初にテストしてみるべきだった。そうすれば バカにつける薬 を軟膏にしただろう。


舞子の頭に【バカは死ななきゃ治らない】が浮かんだ。



作品名:天才飯田橋博士の発明 作家名:伊達梁川