天才飯田橋博士の発明
13 個別冷房装置【改】
【個別冷房装置】を、テスト前に却下という判断を下された飯田橋博士は、夜も寝ないで昼寝してついに改良型「個別冷房装置」を作り上げた。
そして、助手の神楽坂舞子の前立った。
「舞子君、この前はあまりにも個人的趣味によりかかり過ぎた。今度はファッション的に完璧とは言えないがまあまあ恥ずかしく無い出来だと思う。
舞子は、少し投げやりな様子でそれを広げて身体に当ててみた。市販されているサウナスーツを利用したようだ。
「まあ、ロボコンよりはいいけど、太って見えるよね」
博士は、舞子の気に入られるように言葉を選んで
「うん、少しはしかたがないね。でも舞子君は細いからこれで肉感的に見えていいと思うよ。少し散歩がてらテストをしてみてくれないかね」
「ま、せっかく作ったんですものね」
舞子は少し気をよくして、着がえの部屋に入っていった。
「博士ぇ 顔と耳は出るんですね」
「うん、顔を隠すと怪しい者になるし、耳はコミュニケーションや身の安全のために出しておかなければなあ。うん似合うよ。近未来のファッションみたいだ」
「あら、そうかしら、やっぱりモデルがいいとこんなものでも着こなせちゃうものなのね。ふふふ」
舞子は少しスキップをしそこねながら出て行った。
案外早く戻ってきた舞子の様子に、博士は嫌な予感を感じた。口数の多い舞子が何も言わずに着替えの部屋に向かったのだ。
「また、失敗か。今度こそは成功したかに思えたが」
博士は、どこが悪かったのか考えてみたが思い浮かばなかった。
「博士ぇ」
舞子が赤い顔をして睨みつけている。
「な、なんだ。冷房はうまくいった筈だが」
「耳無し芳一の気持ちがよく解りましたわ。そして顔も熱さのせいか恥ずかしさのせいか分からなくなってしまいます」
「ま、少しの欠点は……」
「博士!」
「な、なんだね大きな声で」
「トイレ! 着脱が面倒で咄嗟に間に合いません。それに」
「な、なんだ。まだ何か」
「汗のかきすぎです。これ」
「ああ、それか。冷房の結果、表面に水滴が付く。これはどうしようも無い。すぐに蒸発しないかね」
「回りに人がいなければね。でもこれじゃ混んだ電車には乗れません」
飯田橋博士 成功はいつ?
了
作品名:天才飯田橋博士の発明 作家名:伊達梁川