天才飯田橋博士の発明
12 個別冷房装置
「博士ぇ、暑いですう、冷房の効いている自宅や電車の中から外に出たとき、たまりません。東京中を冷房すること出来ませんかねえ」
休憩時間にお茶を飲みながら、助手の神楽坂舞子がはなから期待はしてない調子で言った。
「いくら、天才でもそりゃあ無理だ」
置いてあったお菓子の袋をやぶりながら博士が言って、その手を止めた。
「どうしたんですか、博士、せんべい嫌いでしたっけ」
「舞子君、これだ、個別包装だよ」
「はあ?」
「街中の冷房は無理だが個別冷房なら出来るんじゃないか」
博士は立ち上がり工房へ入って行った。
そして数日経った。
「舞子君、出来たよ。これを被って歩けばどこへ行っても暑くない。密閉されているから聞く耳の部分と話す口の部分に手間取ったがね」
いくらかでも期待した自分が愚かだったと舞子は思った。
「博士、これって ロボコン そっくりじゃないですか」
「おう、君もがんばれロボコン知ってるのかね」
「そ、そりゃ知ってますよ、再放送で見たのかなぁ」
「それでは愛着があっていいじゃないか」
「博士ぇ、この格好で外を歩けと言うんですか」
「いやかね。涼しいよ」
「博士、ファッション性というものを考えました? これは若い女性向きでは無いです」
飯田橋博士は、舞子の言った「若い女性」が誰のことを言っているのか疑問があったが、久しぶりの発明も、テスト以前に却下という厳しい結果になって肩を落として工房へ戻って行った。
飯田橋博士 次の発明はあるのか。
作品名:天才飯田橋博士の発明 作家名:伊達梁川