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双子魔法使いのお茶会 -翠と碧- + エピローグ

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+ 繋がる出来事、これからの世界 [蒼と黒、一つ目のエピローグ。]+



「ねぇ、次に何処に行きたい?」

一つの時間と場所を黒と過ごした蒼は尋ねる。
黒は大きな欠伸を一つ付いて、べつにぃ、と短く答える。
ひょいと黒を持ち上げ、蒼は目の前に持ってくる。

「あら、僕のかおに何かついてるぅ?」
「…」
「…つっこんでよ」

ばしっ、と片手を黒の脇から外して狭い額を指で叩く。

「あたたっ、そ、そーじゃないでしょっ!?」
「…つっこめって言ったじゃない」
「…それはつっこみって言わないぃ」
「そなの?」

呆れ顔の黒と、小首を傾げて不思議そうな顔をする蒼。
蒼と黒は何時もこんな会話を続ける。
傍から見たら、本当に何をしているか分かり辛い。
人によっては、「傍によると違う意味で危険」と思うかもしれない。

何処からともなく流れてくる紅の噂。
まだ顔までは広がっていないから、同じ顔をしていても何の危険もないのだろう。
同じ時間と場所に留まり続ける事は危険が伴う。
だけれど、違う時間と場所へ行っても、多分又紅の噂を聞くのだろう。
文明が発達している所では、ひょっとしたら顔やら何やらが全部記憶できて。
蒼を見て紅だと思うのかもしれない。
黒はそう考えている。

-たのしいじかんを邪魔されるのは、いやねぇ。-

心の中で呟く。
蒼は、まだ遠くを眺めていた。
ちらり見上げても、その視線の先からは何も感じ取れない。

蒼は何時も遠くを見ている。
何処に心を飛ばしているのだろうか。
優しいのか、冷たいのか判断するのが難しい。
別に人がいいわけでもない。
ただ、その言葉一つ一つが鋭くて。
暖かくて。
屁理屈っぽくて、黒は好きだった。

あの日。
蒼と初めて逢った日。
「君の名前は?」と聴かれ、自分に名前がないことに気が付かされた。
「しらにゃい~」とおどけて答えると、そう、と短く返答されて。
胸が痛んだ。
僕の目をまっすぎ見て、僕の髪の色と瞳の色を見て。
少し考えてから、

「くろ…」

君の名前はくろ、だと黒に伝えた。
与えられた名前。
胸に広がる音。
生きていると言う実感。

そして又ある日。
蒼と「改めて」初めて逢った日。

「ねぇ、ぼくの名前、よんでくれないかな?」

静かに頷いて、短く、
「黒…」

伝える蒼の声。
黒の魂に強く焼きつく、蒼と言う存在。

-こんなにも強くかんじるのは、白以来かな?-

心の中で思っていると、蒼は突然又質問を投げかけてきた。

「ねぇ、白のことは心配じゃないの?」
「え?」

中を覗かれたような気がして吃驚したが、黒は直ぐ平静を取り戻して、
「だいじょーぶ。白のことはわぁかってるから」

とにんまり笑って黒は回答した。
嘘ではない。
黒には、分かる。
白の呼吸は、まだしっかりと聞こえている。
香りも、しっかりと届いていた。
そう、と短く頷いて

「よかったね」

蒼の表情に優しい笑顔が灯る。
何処かを眺めている蒼の表情も嫌いではないが、この微笑が黒は一番好きだった。
時々見せるのが心憎い演出だ、そう思っている。
-いつも見ていたら、しあわせ、かんじないでしょ。-

結局何処へ行くかという事を決めずに、蒼は風を起こす。

「これがその名のとおり、かぜまかせぇ」
「そうだ。」

柔らかな風が巻き起こり、二つの影を包んで。
見知らぬ世界へ、出来事を運び込んだ。