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秘密の花園で待つ少年 ~叔母さんとぼくの冒険旅行~

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「万理おばさん。このベッド、シングル?…っていうか、この長さは外人さんには絶対短いよね。万理おばさんよりちょっと長いくらいだよ? 幅だって一メートルある?五十センチくらいしかないんじゃない?!」
「狭い部屋だからね…あら、スプリングは結構いいわよ。ほら(笑)」
「収納もこのクローゼットもどきしかないよ。貴重品は置けないね。」
「でも、ほら。スーツケースはばっちり入るわよ! 貴重品は部屋に置いて言っちゃだめよ。日本じゃないんだから!」
「この扉は?ああ、ユニットバス?…って、湯船がないよ!万理おばさん!」
「何言ってんの。ヨーロッパにはお風呂なんてあるわけないでしょ! それより、シャワー室は狭いけどトイレや洗面台の壁はタイルを張り替えたばかりみたいだし、広くていいじゃなーい。日本のビジネスホテルのユニットバスよりましね」
「……万理おばさん。シャワーくくりつけられて、ぼくじゃ手が届かないよ!」
「もう、うっさいわね!シャワー使いたいときは蛇口くらいひねってやるわよ!」

 今日は既に十二時を超えているため、歯磨きをして明日に備えて寝ることに決めた。
 ぼくは窓側のベッドを選び、寝間着に着替えてスプリングのきしむ音を聞きながら横になった。万理おばさんが何やら話しかけてきたが、疲れがどっと押し寄せてきたのか眠気が勝る。
「明日の予定はね。とりあえず、定番のビックベンとウエストミンスター寺院にバッキンガム宮殿を見に行くわよ。寺院の中を見てみたいから他はパスね。あちこち見てたらあっという間に一日が過ぎちゃうから。そのあとはトラファルガー広場に行って昼ご飯を食べましょ…って、寝ちゃったのね。」
 静かな寝息を立てるぼくに肌掛けを肩までかけ直し、万理おばさんは明かりを低くした。


 ぼくが目が覚めたときにはすでに万理おばさんは起きていて、シャワーまで使って出掛ける支度をしていた。ぼくもシャワーで軽く体を洗い、歯磨きをしながら支度を始める。
「そろそろ七時ね。ご飯を食べに行きましょうか。コンチネンタルブレイクファーストだから、あまり期待しないでね」
「? どういうこと?」
 不思議に思ったぼくは、万理おばさんの言う意味をすぐ理解することになる。
 食堂に着くと数人の泊り客が席に着き、もそもそと食パンを食べている。
 なんとなく様子がおかしい。
 ぼくたちも席を決めてパンを取りに行くと…大きなオーブントースタを中心に、食パンの山とマーガリンとジャム、紅茶とコーヒー、ティーカップと砂糖とミルク。
…………のみだった!!!!

「万理おばさん…」
「あ、あら~随分、簡素ね~」
 あははは~と万理おばさんはごまかすように笑った。
 とりあえず、大きなトースターにかなり薄くスライスされた食パンを乗せる。スイッチを入れると中でキャタピラーみたいに動きだし、パンが奥へと移動する。中は真っ赤に焼けてパンは少しずつこんがりと色が付いてくる。カタンと下に落ちたパンはさらに手前へと運ばれて…
「こんな大がかりなトースター初めて見たよ!」
「ちょっと面白いけど、焦げすぎね~」
 ぼくたちは食パンを二枚ずつマーガリンにいちごジャムをつけて、万理おばさんがコーヒー、ぼくは紅茶を手に席へ戻った。
 食パンをもそもそ食べながらぼくたちはこそこそと話し始めた。
「万理おばさん、ちょっとここのホテル、クラス的にどれくらいなの?」
「しょうがないでしょ?最初は一人で来るつもりだったし、交通費だけで結構するのよ?それに、イギリスは物価が高いの。ちなみにこのホテルだって一泊一万円くらいなのよ。」
「はあ?!! なにそれ。日本だったら結構いいホテルに泊まれるよ?」
「しぃ! バカ。声がでかいわよ!」
「日本語わかる人なんかいないよ。」
「それでもニュアンス的に悪口っていうのはわかるもんなのよ。人ってやつは…」
 辺りを窺うと、みんなそれぞれ銘々にサラダやら果物を持ってきて食べているようだった。
「話しに聞くともうちょっとちゃんとした朝食だって聞いたんだけどなぁ」
「明日はぼくたちも果物とか買っておこうよ」
「冷蔵庫が無いから生ものは避けた方がいいかしら。サラダくらいだったら大丈夫か?」
 そんなことを話しながら朝食を済ませて、部屋へもどり出掛ける用意をしてフロントで鍵を預けて外に出る。

 イギリスは雨が多い。と聞いていたのと違い、天気はとてもよかった。
 周辺は同じような建物ばかりだが、古い感じと日本では見ることができない建物は異国の地へと立っている実感が十分にあってドキドキする。
 近くでカランカランと鐘が鳴る音が聞こえる。どこかに教会があるのだろう。
「ふふふ。よーし!ロンドン観光にしゅっぱーつ!」
「まずはどこへ行くの?」
「地下鉄に乗ってウエストミンスター駅に降りて、ビックベンを見ながらバッキンガム宮殿で衛兵交代が十一時くらいにあるからそれを観ましょう」
「おー!」