「山」 にまつわる小品集 その壱
クライマックス (官能小説)
「吾朗さん、私、あなたの子供を産む決心をしたわ」
「ほんと? 茶美。じゃ(ゴクン)いいんだね」
手足を地に付けた姿勢で茶美は吾朗にお尻を差し向けて、左右に振った。
吾朗は茶美の腰を抱えるようにして後ろから乗りかかり、からだを細かく揺すりだす。
茶美はしばらくすると 走りだした。
吾朗は後ろ向きで、その走りに合わせている。
それを見ていた私は、叫んだ。
「ワァーン、コロがえらいこっちゃ、だれか〜」
すると、隣の家のおじさんが洗面器を持って走り出て来て、水をぶっかけた。
コロと茶美は キャン と鳴いてそれぞれの方向に駆け去った。
「今の時期はおしりが凍ってくっつきやすいんや」
と教えてくれた。
コロは私が飼う黒色の雑種犬。
茶美は近所に住んでいる、白色の雑種犬である。
昭和40年ごろは犬は放し飼いが普通で、時折見られる光景だった。
数週間後、茶美は5つ子を生んだ。
2011.5.11
作品名:「山」 にまつわる小品集 その壱 作家名:健忘真実