「山」 にまつわる小品集 その壱
即身仏 (伝奇小説)
壇ノ浦にて平氏一門が源義経率いる軍に滅せられ、平宗盛・清宗、重衝らは鎌倉に送られ斬首、宗盛父子の首は三条東洞院にてさらされた。
1185年のことである。
ほぼ1カ月後、京都を大地震が襲い、多数の死者を出した。寺社や宇治川に架かる橋の損壊など、都および周辺地域の人々の生活にも甚大な被害をもたらした。
余震は続いた。
人々は、平氏一族の崇りだ、琵琶湖に住む主・大なまずの怒りを鎮めない限り再び大地が大きく揺れる、などと噂しあった。
その声は政に対する不満を増長させることとなり、朝廷もほうっておけなくなった。摂政の近衛基通は、比叡山から天台座主明雲を呼び出して、仏教の力で怒りを鎮め民心を平らかにせよと言い渡したのである。
作品名:「山」 にまつわる小品集 その壱 作家名:健忘真実