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神社寄譚 1-1 藁人形

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勿論お札の残骸らしきものがあって。
狐さまの一対の瀬戸物の置物があって。
仏教様式の蝋燭タテが一対。
御幣を立てるものがひとつ。
家系でも記したのであろうか書物のようなもの。
なるほど、そういうものが中に入っているのだろう、と。

だが、最初に目に飛び込み、そして今でも脳裏に焼きついているものは。
三本の矢が刺さった藁人形だったのだ。

その後、上島さんの集合住宅については
地鎮祭と完成の際には新築の御祓いをした。
そして実は・・ということで稲荷社の中身について
打ち明けると、上島さんは力なくへたりこんだ。
「やはりそういうことがあったんですか。」

聴けばいつの頃からか
不幸に苛まれるようになった、と吐露する上島さんは
自らの半生を振り返るように云った。
「結局、親も子供も失って、仕事も失い、女房も逃げ出したんです。
この集合住宅だって、女房の慰謝料払うために建てたようなものですから
やはりそういうことが・・あったんですかぁ・・。」

作品名:神社寄譚 1-1 藁人形 作家名:平岩隆