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神社寄譚 1-1 藁人形

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「いえ・・不思議な話なんですがね。
私には姉妹がいまして私は真ん中で、ええ私だけ男なんですけどね。
ええ、姉も妹もそちらの神社さんの近くのうちに嫁いで
ええ、近くに住んでるんですよ。けど疎遠ですけどね。

もう20年になりますかね、私の父親が今で云う
認知症っていうんですかね。罹っちゃって。
農家をしていたんですけどね。突然ワケ解らなくなってね。
私より小柄だったけど軍隊上がりで、農家してましたからね。
身体の出来が違うんですよ。鍛え方が違うっていうか。
鍬だの鋤だの振り廻してね、押さえつけるのが精一杯だったんですよ。

で、ガレージに使ってましたけど改造してね。
今だから言えるけど、座敷牢にしてたんだ。
毎日毎晩、朝も早くから夜半過ぎまで雄叫びをあげながら
狂っていくのがわかったんですよ。

俺を閉じ込めるお前らを呪い祟ってやる!ってね。
そうかと思うと童のように泣きながら
俺が悪かった、俺の家族に手を出すな!って誰かに謝るし
息子の私は見ているのも辛かったが
母親はもっと辛かったと思いますよ。

そしてある日、静かになった。
父親が梁に綱を巻いて頸をくくって死んでました。
正直ね。あんまり壮絶だったからね。
ほんと、そのときはホッとしたんです。
作品名:神社寄譚 1-1 藁人形 作家名:平岩隆