神社寄譚 1-1 藁人形
「ともかく、中身を開けて見ましょう」ということになった。
本来、遷座の儀というと神を目に触れないようにするのだが
そんなことを云っている場合でなく、遷すにしても廃祀するにしても
中の物を出さない事には何も出来ないだろう、と。
私は宮司の指示で白いダンボール箱を組み立てて、
祭壇を稲荷社の前に移動する。
そして神事が始まりいつもより長めの祝詞を宮司が慎重に読んだ後
宮司が社の扉を開き、白い手袋にマスクをして
中のものを丁寧に白いダンボール箱に詰めてゆく。
終わると切麻を撒いて御祓いをする。
祓う対象が多かったため神事の時間が長く掛かった。
作品名:神社寄譚 1-1 藁人形 作家名:平岩隆