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神社寄譚 1-1 藁人形

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そこで中川さんが謂い難そうに云った。
「実は池がありましてその周りの叢を刈ったんですよ。
そしたら・・出てきたんですよ・・お稲荷さんが・・。」
宮司は目を丸くして振り返ると、庭先の池の跡の先に
案内されていくと電動の草刈機で刈られた先に
かなり大きな稲荷社があった。

大きさはざっと1.5mの立方体の社に銅貼りの屋根の立派なものだ。
くすんではいるが朱に塗られた堂々としたものだ。
だがさすがにその前に備え付けられていたのであろう
やはり赤い鳥居は朽ちて倒れていた。

「これが・・叢の中にあった、と?」
宮司が尋ねると、中川さんが頷き、施主の上島さんも控えめに頷いた。
「いやぁほんの子供の頃、確かにあったなぁという
記憶しかなかったんですがね。」
上島さんも思い出したように言う。
彼此、50年近く放って置かれたようだ。

いまでも田舎の方に行けば敷地の一角にお稲荷さんの社を設けて
家の、そして稼業の守り神として奉っている家がある。
住宅地となったこのあたりでも旧家の敷地にはかなり大きな社を
奉っているところもある。

「これも・・立ち退かれるのですかな?」
宮司が尋ねると施主の上島さんは
「いや、滅相も無い。親の代からもっと前からあるものですから。
ここで見つかったのであれば、大事にしたいんですが。」
と答えるが、中川さんは「工事中、丁度入り口の辺りになってしまうんで
一時的に裏庭に移したいのですが」と云う。
作品名:神社寄譚 1-1 藁人形 作家名:平岩隆