神社寄譚 1-1 藁人形
そして電話口の話の確認から始まって
いよいよ現地を見ることとなるのだが小びろい敷地には
古びた大きな二階建ての母屋のほかに
車二台分はあろうか屋根付きシャッター付きのプレハブ造りのガレージがある。
他にも一戸建ての住宅ほどもある物置など建物が多く
昔の農家としての面影が残るひろい敷地。
更に伐採を計画している隣家との境にある数本の椎の木。
「春になると鶯が寄ってきていい木なんですがね。
今回の集合住宅の件で引っ掛かってしまうんで、
この際伐採する事になりまして。」
施主の上島さんはさすがに目を潤ませていた。
隣との境界を示す太い椎の木が4本。
宮司の指示で注連縄を張り巡らせて、紙垂(シデ)を付ける。
解体される建物のひとつひとつの角に御幣を立てて。
折りたたみ式の祭壇を立てて、
お供えをひとつひとつ載せていって。
お供えは真ん中の三方に米を山の如く盛り、右隣には酒を。
いちばん右側には野菜を。中央の米の左隣には海産物の代用として
するめいかや昆布等の乾物を、いちばん左側には季節の果物が供える。
これが一般的な外祭のお供えのようだ。
私は、儀式の準備を進めていく。
作品名:神社寄譚 1-1 藁人形 作家名:平岩隆