神社寄譚 1-1 藁人形
それから女房がおかしくなって・・このままでは危ない。
女房が手首を切って自殺を図ろうとして、私は女房を引っ越させて
やがて離婚してもらいました。すまんことしたなって。
いま、鬱病になっちゃって施設に居ますけど。
え?私の母親ですか。
女房も居なくなりましたからね。
食事を与えるものも居なくなりまして。
いやもっとも食事を与えても
ひとくちも口にしなかった。
薄気味の悪い声で禍々しい罵声を叫び続けて、いつの日か息絶えました。
時代も時代だったんでしょうけど
警察も母親の狂いぶりは知っていたから
仕方ないよね、で、済んでしまいましたけど。
それから私はここにひとりで住まってます。
昼は女房の世話をして、夜はガードマンやってます。
でも、やはりなにか・・あったんでしょうね。
そうでもなきゃぁ・・。」
作品名:神社寄譚 1-1 藁人形 作家名:平岩隆