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ダヴィンチコード イン ジャパン

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 ワイズバーグが、「あなたは日本人なのにどうしてエルサレムに興味を持ったのですか。ク
リスチャンですか。」と聞いてきた。

 木村は、「僕はクリスチャンではありません。しかしイエス・キリストに興味を持っています。」
と言うと、ワイズバーグは、「インターレスティング(興味ある。)」と言い、話を締めくくった。

 二人は握手を交わし蕎麦屋を出る。

 木村が会社に戻ると、ワイズバーグからのメールが着いていた。A4で200枚ほどある資
料である。

 業務部の翻訳課にメールし、本日中に翻訳するように頼むと、一週間はかかるとメールで返
事があった。

 木村は翻訳課に飛んで行き、課長を捕まえて、「明日の昼までに翻訳がないと契約が飛んで



しまう。細かい所はどうでもいいから、ともかく日本語にしてくれ。」とねじ込むと、

 女性の課長は、「あなた英語はできるのでしょう、自分でやればいいじゃないの。」、 

「今は夏休みで人がいないのよ、これだけのものを訳すのに一週間というのは大変な速さです。」
と言って、突っぱねられた。

 しょうがなく、木村は資料を自分で訳すはめになってしまった。木村は時間がないので、資
料を簡単に読み要点だけを日本語にすることにした。そしてA4、
10
枚ぐらいの日本語とA4、
200枚の英語を見せて説得すればいいと決めた。

 それから資料を読み始める。最近大きな英語の資料を読んでいなかったこともあり、えらく
時間がかかる。夕方7時頃コンビニの弁当を買って来てもらって食べた。夜
10
時ごろになって
もやっと半分ぐらいしか終わらない。

 木村は桃子の携帯に電話をかけ、「桃子、まだ会社にいる。今日は徹夜になるかもしれない。」、

「何かあったら、携帯に電話してくれ。」と言うと、

 桃子は、「あなた、大変なのね。無理しないでね、私は家で待っているから。」と言って電話
を切った。

 木村は急いで資料を読む。それからは随分飛ばし読みをして、どんどん読んでいった。

夜中の2時頃にやっと読み終わり、日本語の資料を作り始める。「バイオ燃料の原材料にする
ため、大豆からとうもろこしへの作付け変更が世界的に起こる。」「先進国の政府がバイオ燃料
の普及の約束をしているので、この作付け変更は必ず起こる。」「最低
20%の作付け変更が起こ



る。」「それ故、値段は最低
20%上がる。」といった資料をA4、
10
枚ほど作った。資料が出来
上がると朝になっていた。

 会議室の椅子の上で少し寝ていると、7時半頃になった。

 例によって部長が一番先にやって来た。

 木村を見付けると、「ご苦労様、聞いたよ、翻訳課で突っぱねられたんだってね。」と言うと、

 木村は、「嶋田理事長にすぐに会わなくてはなりません。」、「いつものおみやげを大至急用意
してください。」と言う。

 部長は、「今日の昼までに用意する。」と答えた。

 この嶋田理事長とはせこい人間で、何かおみやげを持っていかないと二度と会ってくれない。

  朝9時
30


 木村は全国豆腐組合に電話をかける。

そして、理事長とのアポを午後2時に取った。

簡単なコンビニ弁当を食べた後、部長からUSビーフの特上品のセットを受け取り、それを持っ
て豆腐組合に向かった。豆腐組合のビルは神田にあった。木村はタクシーで豆腐組合に行き、
ビルに入る。ビルは古く、エレベーターはなかなか来なかった。やっとエレベーターに乗り8
階の理事長室に行くと、
65
歳ぐらいの太めでバーコード頭の嶋田が待っていた。



 嶋田は開口一番、「おお、元気か。」と言った。

 木村は、「先日アメリカに行ったとき、理事長にと思って買って参りました。」と言って、先
ほどの牛肉のセットを渡した。

 嶋田は、「おお、いつも悪いな、アメリカのどこへ行ったのだ。」と聞いた。

 木村は、「シカゴです。」と答えた。そして木村は、「今日は理事長にいい情報を持ってきま
した。」と言って、昨日徹夜で作った資料を見せた。

 まず200ページの英文を手渡した後、
10
ページの日本語を渡した。

 嶋田は英語が全然分からなかったので、分厚い英文は机の上に置き、
10
ページの日本語を読
み出した。

 嶋田は読み終わると、「木村君、いつから上がりそうなのか。」と聞いた。

 木村が、「理事長、来月から聞いております。」と言うと、

 嶋田は、「カーギルは、今月なら従来価格で契約する、と言っているのか。」と聞いた。

 木村がおもむろに、「そう言っております。今がチャンスと考えられます。」と言うと、

 嶋田は、「分かった。私もその話はよそからも聴いている。」と言って、「今日中に返事をす
るから、カーギルにその旨を伝えて置いてくれ。」と言った。

 木村がゆっくりと、「はい、分かりました。夕方5時ごろまでお待ちしていればよろしいでしょ
うか。」と聞くと、

 嶋田は、「分かった5時までに返事する。」と言った。



 木村は会社に戻り、電話を待つ。

 午後4時半頃、理事長の秘書から電話があった。

木村が電話に出ると、嶋田が変わって電話口に出た。そして、「OKだ、あす
26
日2時から契
約する。カーギルも連れて来てくれ。」と言った。

 木村は、「分かりました、カーギルと明日午後2時にお伺いいたします。」と言って電話を切っ
た。

 そして大声で、「やった、やった、契約だ。」と叫んだ。

部長が飛んで来て、「やあ、木村君お手柄だ、今日はもう上がっていいよ。昨日は大変だったな。」
と言って、「木村君例の休暇、9月1日より2週間でいいかな。」と言った。木村は内心随分ず
うずうしい奴だと思った。

 木村はカーギルのワイズバーグに電話をかける。

「豆腐組合との契約が成立した。調印日は今月のあす午後2時からということになった。今日
契約書をメールして欲しい。豆腐組合と話をつめておく。」と言うと、

 ワイズバーグは、「グレート(結構だ)。あすは私が行く。」と言った。

 木村はワイズバーグとの電話が終わると桃子の携帯に電話をかける。そして、「昨日は電話
しなくてごめん、徹夜になってしまい会議室の椅子の上で2時間ほど寝た。」と言うと、

 桃子は、「それは大変だったのね、今日は何か美味しいものを作るから早く帰ってきてくだ
さい。」と言った。



 木村は、「分かった。」と言って電話を切った。そしてコーヒーを一杯飲んだ後、帰宅した。

 家では桃子が、木村の大好きな魚と蛸のしゃぶしゃぶを作って待っていた。

 木村が、「お蔭様で豆腐組合との契約が取れた。」と言うと、

 桃子は自分のことのように喜んだ。

 木村は桃子の料理を食べ、「やっぱり桃子のしゃぶしゃぶは最高だね。」と言った。

 桃子は、「うん。」とうなずき木村を見つめていた。

 そして木村はエルサレム行きに、思いをめぐらし始めていた。

 豆腐組合とカーギルの契約は順調に終わり、

 木村はいよいよ9月1日よりエルサレムに出発することになった。



  エルサレムでの体験