ダヴィンチコード イン ジャパン
9月1日 午前5時
30
分
目覚まし時計が、けたたましい音を立てて鳴り出す。
木村は飛び起き横に寝ている桃子に、「エルサレムに行ってくる。」と言うと、
桃子は寝ぼけ声で、「くれぐれも、気を付けてね。無理しちゃだめよ。」と言った。
木村は、「すぐに出かけなければならないから、寝ていいよ。帰る日は携帯に電話する。」と
言って、着替えを始めた。
そして前の日にパックしておいたスーツケースを引きずりながら、部屋を出て行った。歩道
を早足でスーツケースを引きりながら進む。6時半の成田エクスプレスを予約してある。品川
駅に着くと缶コーヒーとサンドイッチを買い、成田エクスプレスに飛び乗った。
電車に乗るとスーツケースを置いて、小さなハンドバゲージを持って席に座った。朝早いこ
ともあり、電車はがらがらだった。
木村の車両には、前の方に空港の従業員風の女性が二人乗っているだけだった。
木村は缶コーヒーを開けサンドイッチを食べながら、スケジュールの確認を始める。
朝9時発の日本航空で香港に行く。
香港でイスラエル航空に乗り換え、イスラエルのベングリオン空港に行く。
そこからバスで、ワイズバーグに教えてもらったエルサレムのアメリカンコロニーホテルに向
かう。たぶんホテルに着くのは、夜
10
時ごろだろう。
木村は、「今日は長い1日になるな。」とつぶやいた。
木村はサンドイッチを食べ終わると、ひと眠りすることにした。
午前7時
40
分
成田エクスプレスは予定通り成田空港に着いた。
木村はスーツケースを持って電車を降り、セキュリティーを通過して、エスカレーターで出
発ロビーに向かった。
日本航空カウンターでチェックインを済ませ、搭乗者口に行く。ボディーチェックを受けた
後、出国カウンターに向かった。カウンターを通過後、ドリンクバーで生ビールを一杯飲む。
そのとき木村は、何か大変な旅になる予感がしていた。
午前8時
30
分
木村は飛行機に乗り込む。
飛行機は定刻の午前9時に出発した。
香港でイスラエル航空に乗り換え、イスラエルのベングリオン空港に向かった。イスラエル
時間で夕方6時頃だろうか、飛行機が高度を下げ始めた。
それから1時間ほどすると、飛行機はベングリオン空港に着陸を始めた。
木村はイスラエルに来るのは初めてだった。
ここは赤軍派の岡本公三が乱射事件を起こした空港である。
木村に緊張が走る。
スチュワーデスが、「飛行機が完全に停止するまで、シートベルトを付けてお席でお待ちく
ださい。」とアナウンスした。
木村はそのアナウンスを聞きながら、イスラエルとはどんな国なのか考えていた。たぶん、
入国手続きにはかなりの時間がかかるのだろうなと覚悟していた。
飛行機は余り混んでいなかったが、どれくらい時間がかかるかは分からなかった。
もう夏休みも終わっていたので、観光旅行風の日本人はいなかった。中国人のビジネスマン
風の人がかなりいっぱい乗っていた。
木村は飛行機が完全に停止するのを待って降り始める。ドアのところでスチュワーデスに会
釈し飛行機を降りた。
意外にも入国手続きは簡単で、入国カードを1枚書くだけだった。そのカードとパスポート
を見せると入国審査官は日本語で、「ようこそ、イスラエルに。」と言い簡単に通してくれた。
バゲージクレームでスーツケースを受け取った後税関に行くと、ここでも、パスポートを見た
だけでスーツケースは開けなかった。
空港のゲートを出て、ホテルに行くバスを探す。もう夕方8時頃であたりは暗くなり始めて
いた。
木村は銀行でお金を交換してから、バスの停車場に向かう。停車場に行って見ると、マイク
ロバスぐらいのバスが止まっていた。そのバスに近寄り、運転手にアメリカンコロニーホテル
を言うと、こちらに来いと手招きをする。
バスに乗り込み
30
ドルぐらいを支払う。しばらく待って、何人かの客を乗せたあとバスは出
発した。1時間ほどするとアメリカンコロニーホテルに到着する。ホテルはあまり大きくない
が、昔のコロニアル(植民地)風の建物であった。
木村はバスを降り、ホテルのフロントに向かう。ホテルは一泊500ドルという高級ホテル
であった。中にはサウナバス・プール・フィットネスセンターなどがあった。
木村はチェックインを済ませ、部屋に向かう。
時間は夜の
10
時頃になっていた。
木村は長時間のフライトで疲れていたので、
レストランで簡単な食事をして後、その日は休んだ。
9月2日 午前8時
木村は起き上がり朝食を取った後、ゴルゴダの丘の上に建てられたという聖墳墓教会に向か
う。
タクシーで旧市街地に行く。
旧市街地は城壁に囲まれていて、中には岩のドーム・嘆きの壁・聖墳墓教会という3つの宗
教の聖地がある。
イスラム教徒と十字軍が何度も死闘を繰り返した、まさしくホットな場所である。
木村は城壁の所でタクシーを降り、旧市街地に入る。
細い路地が入り組んでいて、2、000年前に迷い込んだような気がした。
聖墳墓教会の中に入る。
木村が中に入り奥に進もうとすると、長いひげをはやした老人がそこにいた。
木村を待っていたかのようであった。
木村は老人の後に妙な視線を感じる。
黒服・黒ネクタイ・黒めがねの細身の白人が木村と老人の様子を伺っている。
そのとき老人が木村に1枚のカードを手渡した。
木村はそのカードを受け取り、見てびっくりする。
そのカードは、何とあのピザ屋が持って来たのと同じ、「モナリザトランプのクラブの6」だっ
た。木村はピザ屋からモナリザトランプをもらった後、気になって「グラブの6」の意味をイ
ンターネットで調べた。
意味は、「新しい出会い」とあった。
木村は不安げに更に中に進む。
あの黒服が木村をつけてくる。
第
11
ステーションと言われる、キリストが十字架に付けられた部屋に出た。正面に、十字架
に付けられ横たわるキリストの姿が描かれている。前に祭壇がある。木村は祭壇の前で一礼し
た。
隣に第
12
ステーションといわれるキリストが息を引き取った部屋があった。
木村はその部屋に入り、びっくりして後に転んでしまう。
木村の前にキリストが現れ、北の方を指差している。
木村は立ち上がり、持っていたガイドブックに付いているヨーロッパの地図を北にあわせて
広げた。その地図を見ると、キリストがロシアのサンクトペトロブルグを指差していることが
分かった。
キリストは青森で会ったときと同じく、天に昇っていった。
木村は教会を出て急いでホテルに戻る。
あの黒服がまだつけてくる。
ホテルの部屋に戻ると午後2時頃になっていた。
木村はルームサービスに電話をかけ、「コーヒーとサンドイッチをお願いします。」と言った。
ルームサービスの係りは、「サンドイッチは何にいたしますか。」と聞いきた。
作品名:ダヴィンチコード イン ジャパン 作家名:HIRO サイトー