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ダヴィンチコード イン ジャパン

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 桃子が、「私にはよく分からないけど、ダヴィンチは何かを読むか、見るかして、下北半島
のことを知ったのじゃないかしら。」と言った。

 木村は、「その説は有望だな、ダヴィンチは何にでも興味を持った人だから。」と言って、ビ
ールを飲み干した。

 桃子は木村のコップにビールを注ぎながら、「もっとダヴィンチのことを調べれば、きっと
何かが分かるわ。」と言った。

 木村はパソコンを引っ張り出し、ダヴィンチのことを調べ始める。

 木村はミケランジェロの大ファンで、度々イタリアに出かけていた。

 しかしダヴィンチにはあまり興味がなく、ミケランジェロとの確執のこと以外あまり良く知
らなかった。

 木村はインターネットを見た後で、「もう一度調べて見る必要がありそうだ。」と言った。

 桃子が八幡平の話を楽しそうに始める。

 「頂上の温泉は凄いでしょう。あそこは日本一高いところのある温泉なの。」と木村に同意を
求めるように言った。



 木村は無言で、「うん、うん。」とうなずいた。

 桃子が、「そういえば、盛岡の冷麺を食べるのを忘れていたわ。」と言うと、

 木村は、「仙台で散々牛タンを食べたじゃないか。」と答えた。

 桃子は、「今度行った時には、必ず盛岡に行きましょう。」と言った。

 木村はその話にうなずきながら、頭はダヴィンチのことでいっぱいだった。

 木村はここまでのキーワードを並べてみた。

   「両親の事故、」、

   「不思議な感覚、」、

   「キリストとの出会い、」、

   「モナリザと下北半島。」、

 考えれば考えるほど分からなくなる。

 桃子は相変わらず、旅の思い出を話した。

 「八戸のあわびは美味しかったでしょう。」、

 木村は話しに、ただうなずいていた。

 二人のかみ合っているのか、いないのか分からない会話が続いているうちに夜が更けてきた。

 木村が、「今日は運転で疲れたからそろそろ寝る。」と言って、



 「桃子はどうする。」と聞くと、桃子は、「分かりました。私もシャワーを浴びてから寝ます。」
と答えた。

 木村はその日はそのまま休み、月曜日に国会図書館へ竹内古文書の調査に行ったが、「東京
大空襲で消失した。」という以外ことは分からなかった、

そして火曜から、会社に行かなくてはならなかった。



          

          第二章 エルサレム



  木村の休暇

  8月
24
日 午前8時

 真夏のうだるような暑さの日だった。

 木村が起き上がると、桃子はコーヒーを入れトーストを焼いて待っていた。

 木村は、「桃子、おはよう。」と声をかけ、トーストにバターを付けながら、コーヒーを飲み
始める。そして、「桃子は今日どうする。」と聞くと、

 桃子は、「私は友達と会うので出かけます。」と答えた。

 木村は、「分かった。僕は今日遅くなるので夕飯は済ませてから帰る。」と言うと、

 桃子は、「分かりました。」と答えた。

 木村は桃子に軽く会釈し会社に急いだ。品川駅までは、歩道でつながっている。ハンカチで
汗を拭きながら、歩道を急いで歩いた。駅に着くとJRで東京駅に向かった。

 東京駅の前にある丸ビルに木村の会社はある。地下からビルに入り、28階の木村の会社に
急いだ。会社に着くやいなや、木村は部長に席に向かった。部長はいつも一番早く会社に来て
いる。

 そして、「部長、おはようございます。」、「急用が出来て、イスラエルに行かなくてはなりま



せん。」、「2週間ほど休暇をいただけないでしょうか。」と言うと、

 部長は、「馬鹿やろう、お前は昨日まで夏休みだろう。」、「また休暇が欲しいというのか。」
と不機嫌そうな顔で言った。

 木村が、「そこを何とかお願いしたいのですが。」と再び言うと、

 部長は、「今月中に、例の契約を決めれば来月の頭から休暇をあげましょう。がんばってく
ださい。」と言って、話を締めた。

 木村は、「分かりました。」と言ってため息をついた。

 例の契約とは、穀物メジャーのカーギルと全国豆腐組合との間に年間契約を結ばせるという
ものだった。

 木村は頭を抱える。

 全国豆腐組合の理事長というのは大変な食わせ者で、簡単に契約書に判をつくような人間で
なかった。木村はカーギルの日本支社に電話をかけ、支社長と話しをする。

 そして、昼飯を食べる約束を取り付けた。

 昼食はカーギルの支社がある、六本木ヒルズ近くの蕎麦屋に行こう、ということになった。

 木村は
11
時半頃その蕎麦屋に行き、支社長を待った。

 
11

50
分頃、カーギル日本支社長のロバート・ワイズバーグが一人で現れた。

 ワイズバーグは
40
歳ぐらいで細身のスポーツマンタイプだった。木村はワイズバーグに握手
を求め、型どおりの挨拶をした。



 それから二人はそばを注文する。木村は大せいろを、ワイズバーグは天せいろを注文した。

 木村はそばの注文を終えると英語でワイズバーグに、「ここで一気に豆腐組合との契約をま
とめてしまいたい。」、「理事長の嶋田幸助は抜け目のない人間である。」、「大きなブラフでも打
たないとなかなか契約にならない。」、「そこでバイオ燃料の話を出し、ここ数ヶ月で大豆は間
違えなく
20%以上上がる、と持ちかける。」、「契約のチャンスは今しかない。」と締めくくれば
必ず乗ってくる。

 そこでそばが出てくる。二人はそばを食べながら、話を続ける。

 ワイズバーグは木村の話に興味を持ったようで、「木村さん、私はどうしたら良いのですか。」
と聞いてきた。

 木村は、「そのための資料が欲しい、A4サイズで100枚ぐらい欲しい、翻訳はこっちで
やるので英語で結構です。」と言うと、

 ワイズバーグは、「それなら簡単です。今日の午後メールします。」と答えた。

 木村は、「ワイズバーグさん、私は自信があります。嶋田のおやじを口説いて見せますから
期待して待っていてください。」と言うと、 ワイズバーグはその言葉に感心したようで、

「あなたの言葉を信じます。」と答えた。

 木村はそばを食べながら、「これは仕事と関係ないのですが、僕はエルサレムに行きたいと
思っています。」と言うと、

 ワイズバーグは、「私の父はイスラエル出身です。私も何度も行ったことがあります。嘆き



の壁をぜひ見てください。」と言った。

 木村が、「聖墳墓教会へ行きたいのですが、どこのホテルがいいでしょうか。」と尋ねると、

 ワイズバーグは、「アメリカンコロニーホテルが良いでしょう。すぐ近くです。あの辺はテ
ロが多いので、気を付けてください。」と言った。

 木村が、「ゴルゴダの丘の後に、聖墳墓教会はあるのですか。」と尋ねると

 ワイズバーグは、「ゴルゴダの丘がどこにあったかはいろいろな説がありますが、聖墳墓教
会の場所というのが有力でしょう。」と答えた。

 そこに蕎麦湯が出てくる。二人は蕎麦湯を飲み始める。