ダヴィンチコード イン ジャパン
二人は伝承館を出て、再びキリストの墓の前を通りさっき登って来た坂の方に向かう。
木村はキリストの墓の前で立ち止まり墓を見上げるが、もうそこにはキリストの姿はない。
木村は坂を下りながら、もう一度さっき起こったことを考え直してみた。
両親の交通事故と、キリストの姿を見たことには何か関連がありそうだ。
事故以来の妙な予感から、キリストが自分のことを呼んでいるような気がしていた。
そして木村は再びエルサレム行きと、竹内古文書の調査を決意する。
東京に戻る
8月
18
日 昼
12
時
二人は車に戻り、これから八幡平に行く相談を始める。
木村が、「八幡平に行くには、青森に行くのと、八戸に戻るのとどちらがいいかな。」と聞くと、
桃子は、「八戸に戻った方が早い、お盆だから早くホテルを予約しなければ、」と答えた。
木村は車に置いてあるパソコンを取り出し、ホテルを探し始める。ピッチにつなぎホテルの
電話番号を調べると、ロイヤルホテルという名前のホテルがあった。
桃子に、「ロイヤルホテルって知っているか。」と尋ねると、
桃子は、「そのホテルは少し高いけれどいいホテルよ。」と答えた。
木村はすぐに携帯電話で予約をする。少し高いことが幸いしたのか、すぐにツインルームが
取れた。
木村が、「もう昼だからそばでも食べてから行こう。」と言うと、
桃子が、「またそばなの、回転寿司があるからそこへ行きましょう。」と言った。
木村も桃子の言葉に促され、国道の回転寿司レストランに行った。レストランでまたあわびを
頼むが、これも美味しい。
木村は、「やはりあわびは一味違うな。」と言いながら、あわびとほたてを連続に頼んだ。
かにの味噌汁を頼み、
20
分ほどでむさぼるように食べた。
食べ終わると木村が、「よし急いで行こう。」と言い、車に急ぐ。まだ、キリストのことが頭
から離れないようで、はやく東京に帰りたい様子だった。
車は国道454号線を走り、八戸に戻った。そこから八戸道に入り、八幡平に急ぐ。八戸道
から東北道に入り、松尾八幡平インターチェンジに着くと午後4時頃になっていた。
桃子が、「やっと八幡平に着いたわね、ここの温泉は最高なの。発電所ができるほど熱いの
だから。」と言うと、
木村が、「それは凄い。発電所を見に行こう。」といつもの調子で言った。
桃子は、「あなたはいつもそうなのだから、食事の時間があるから先にホテルへ行きましょ
う。」と促すように言った。
木村もその言葉に従い、パソコンで地図を見ながらホテルに急ぐ。
ホテルに着くと5時頃であった。
ホテルは10階建で、1階に大きなフロントがあった。フロントで名前を言うと、係りの愛
想の良い若い女性が、「9階の
24
号です。」と言って、鍵を渡してくれた。
木村は、「また部屋番号がキリスト見たいだな。」と言って鍵を受け取り、車のキーを渡した。
フロント係りの女性が、「車は駐車場に入れておきます。お使いになるときはフロントに言っ
てください。」と言い、
続けて、「今、お部屋係りが来ますので待っていてください。荷物は部屋係りが運びますので、
そこに置いておいてください。」と愛想良く言った。
しばらくすると、中年の仲居さん風の女性が台車を持ってやってきて、「荷物はこの2つで
よろしいでしょうか。」と聞いた。
桃子が、「はい。」と答えると、その荷物を台車に積んでエレベーターの方に向かった。
二人はその仲居さん風の女性とともに、エレベーターに乗り9階へ向かった。
その女性がエレベーターの中で、「私は加奈子と申します。9階の部屋係りなので何かあれ
ばいつでも呼んでください。」と言った。
9階に着くと部屋に案内される。
部屋は洋室で
10
畳ほどあり、入口の左側にトイレと簡単な風呂があった。そして窓の近く
に細長い畳の部屋が付いていた。
加奈子がその畳の部屋にある低いテーブルの前に座布団を用意して、館内の案内を始めた。
二人はその座布団に座り加奈子の話を聞いた。
加奈子は、「お風呂は地下1階と
10
階にあります。
24
時間いつでも入浴出来ます。10階
のお風呂は露天風呂です。八幡平の山々と岩手山を見ながら、入浴ができます。」と言うと、
桃子が、「それは素晴らしいです。」と口を挟む。
すると加奈子が、「奥さん、ここの温泉は日本一です。」と自慢げに言った。そして加奈子は
お菓子を二人の前に出し、お茶を入れながら、「食事は7時より
10
階のレストランに用意し
ております。木村様のお名前のあるテ―ブルにお付ください。料理は刺身・山菜の天麩羅・岩
手牛のステーキなどを用意しております。お酒は何か用意いたしましょうか。」と聞いた。
木村が、「ビールと地酒、それにワインもあればお願いいたします。」と答えた。
加奈子は、「地ビールに地酒・岩手ワインを用意しましょう。ワインは赤と白どちらにいたし
ましょうか。」と言った。
木村はちょっと考えて、「桃子どちらにしようか。」と聞いた。
桃子は木村が自分に聞いてくれたので上機嫌になり、「あなたの好きな方にしたら。」と答え
た。
すると木村は、「じゃあ、赤にする。」と言った。
加奈子は、「分かりました。」と言って部屋を出て行った。
木村は、「ひと風呂浴びてから食事にしよう。」と言って、風呂に行く用意を始める。
桃子も、「私もお風呂に行くます。」と言って用意を始めた。
木村が、「僕は
30
分したら戻る。桃子キーを持って行ってくれ。」と言うと、
桃子は不機嫌そうに、「私は
30
分じゃ戻れません。
45
分にしてください。」と言って
部屋を出て行った。
木村は、「分かりました。」と大きい声で言い、露天風呂に向かった。45分ほどして二人は
部屋に戻り、レストランに向かう。
レストランに着くと、すでに地酒と岩手ワインの赤が用意してあった。二人が席に座ると、
係りの感じの良い
24
・
25
歳の女性が来て、「もうビールをご用意してよろしいでしょうか。」
と聞いた。
桃子が、「お願いします。」と答えると、さっきの
24
・
25
歳の女性が生の地ビールを持っ
て来た。
二人はどちらかともなく、「かんぱい。」と言い食事を始めた。
そこで木村は一瞬に沈黙の後、「桃子、僕今日凄い経験をした。」と話始める。
木村もどこから話したらいいか分からないようで、口ごもりながら唐突に、
「今日キリストの姿を見た、うそじゃないんだ。本当に見たんだ。」、
「あの二つの十字架の間にいた。」、
「僕は両親が死んで以来、いろいろなものが見えるようになった。」、
「先日も野球をテレビを見ていたとき、ホームランが見えた。」、
「その3秒後、見たとおりのホームランになった。」、
「何が起こっているか分からないが、何かが変わった。」、
「僕にもよく分からない。」、
作品名:ダヴィンチコード イン ジャパン 作家名:HIRO サイトー