ダヴィンチコード イン ジャパン
ナターシャは、「パジャーロスタ(どういたしまして)。」と言い、木村の頬にキスをして隣
の部屋に戻って行った。
暁ジョーとの戦い
9月
24
日 正午
橋詰と鳥栖はキリストの墓に先廻りをして、
墓のある山の上から木村達の車列を見張っていた。
橋詰が双眼鏡で見ながら、「現在異状なし。」と言った。
鳥栖は同じく双眼鏡で隣の山を見ながら、「暁、まだ発見出来ず。」と言った。
木村達が車を降り、こちらの方に歩いて来る。
二人は尾根伝いに隣の山に移動し、監視を続ける。
そのとき鳥栖が、「隣の山の頂上付近で何かが光った。」と言った。
二人に緊張が走る。
橋詰が、「発光点を監視し、地点を特定してくれ。」と言う。
鳥栖が、「隣の山頂上付近の木の上。」と答えた。
橋詰が、「その地点を監視し続けてくれ。僕はみんなの様子を監視する。」と言った。
木村達は坂を登り、頂上の平坦な場所に到着する。
その時急に、木村とナターシャが帽子を落として走り出す。
橋詰が、「まずい、」ともらした。
二人がキリストの墓のある小山の辺りに来ると、
何か光のようなものが射し、よく確認出来なくなる。
橋詰は、「靄が立っている、助かった。」と言った。
木村とナターシャが小山の階段を登り、キリストの墓の場所に行くと、
光が更に強くなり、二人の姿を確認出来なくなる。
橋詰は、「凄い光だ、二人を守っているようだ。」と言った。
その時鳥栖が、「同じ地点で再び発光を確認。」と言うと、
橋詰が、「暁だ、こちらを監視している。」と答えた。
木村とナターシャは光の中にしばらく留まる。
佐山も小山に登り光の中に入っていく。
しばらく時間が経った後、光が下から弱くなってきた。
橋詰が、「やばい。」と言い緊張する。
光の中から薄っすら3人の姿を確認できるようになった。
3人が一塊になって小山を降り始める。
光もかなり弱くなり、おのおのの姿を確認できるまでになった。
橋詰は緊張して監視を続ける。
3人は小山を降り平坦な場所に達する。
そして光がなくなり、おのおのの姿をはっきり確認できるようになった瞬間、
「パン、」という、乾いた音が轟いた。
橋詰は、「暁だ、発砲点に向かう。」と言って走り出す。
鳥栖も橋詰と共に発砲点に向かう。
暁が更にもう一発発砲する。
橋詰が拳銃で応戦する。
橋詰は無線で暁の位置を報告し、山の麓を固めさせる。
橋詰と鳥栖は暁のいる山頂の近くに達する。
二人は暁が潜んでいた木に向かって発砲した。
鳥栖が、「暁はもう木の上にいないようだ。」と言ったその瞬間、
後から銃声がした。
鳥栖が、「足をやられた。」と言った。
橋詰は振り返り、銃声のした方に発砲し、「大丈夫か、」と鳥栖に声を掛ける。
鳥栖が、「左足の脹脛をやられた。」と言うと、
橋詰は、「すぐタオルで止血しろ。」と言い、無線で状況を説明する。
そして鳥栖に、「すぐに応援が来る、僕は暁を追いかける。」と言い、
銃声のした方へ向かった。
山の麓にはパトカーが
10
台ぐらい来ていて、警察官がこちらに向かってくる。
橋詰はゆっくりと暁の方に向かう。
その時右前から銃声がする、
橋詰は身をかがめ応戦する。
橋詰は、「一対一の対決だ、俺が死ぬか、暁が死ぬかだ。」と口走っていた。
橋詰は拳銃に弾を込めながら、はいつくばって獣道を進んだ。
小さい山だったので、間のなく反対側に出た。
下からは警察官が登ってくる。
橋詰は暁に、「両手を挙げて出てこい、逃げる場所はもうない。」と叫んだ。
その時「パン」と、左後で銃声がした。
橋詰は右肩を打ち抜かれた。
血が噴出してくる。
橋詰は一瞬、「これで俺の終わりか。」と思った。
暁は橋詰の右手が使えなくなったことを知って、
止めを刺しに走り寄ってきた。
暁が3mほどに近づいたとき、
橋詰は狙いを定め、発砲した。
暁ののどに命中し、もがき苦しんでその場に倒れた。
橋詰は、「紙一重の差で何とか勝てた。俺が左利きでなかったらこっちがやられていた。」と
口走った。
橋詰は自分の場所を無線で知らせる。
まもなく数人の警察官が橋詰のところに来て、「大丈夫ですか、スナイパーは即死のようで
す。」と言った。
橋詰は警察官に手伝ってもらいタオルで止血をする。
そして二人の警察官に支えられて山を下りた。
麓には救急車が来ている。
その救急車に乗り込むと、中に鳥栖が乗っていた。
鳥栖は、「橋詰さん、あなたもやられたのですか、手ごわい奴だったですね。」と言った。
橋詰は、「紙一重のところだったよ。」と答えた。
橋詰と鳥栖は、そのまま八戸の病院に搬送され手術を受ける。
暁の遺体は、山から下ろされ東京へ運ばれた。
そして歯型・指紋・DNAの照合をしたが、ついに身元は判明しなかった。
自衛隊にも問い合わせたが該当者はいなかった。
いよいよ記者会見
9月
29
日 午後1時
宮川は警察病院に入院中の木村のお見舞いに訪れた。
ナターシャは隣の部屋にいた。
宮川は花束を持って、木村の部屋を訪れる。
そして花束を木村に渡しながら、「木村さん、軽症でよかった。」と言うと、
木村はその花束を受け取り、「ありがとうございます。」と礼と言った後、「警部のお陰です。
もしあの防弾チョッキがなかったら死んでいました。」と言った。
宮川はその話を聞き、「うん。」とうなずいた。
木村が、「橋詰さんと鳥栖さんが、重症を負ったと聞いたのですが大丈夫ですか。」と聞くと、
宮川は、「大丈夫だ、ヘリで一緒だった警察官も元気でいる。」、そして、「橋詰くんがスナイ
パーを仕留めた。」と答えた。
木村は、「それはよかった、橋詰さんは大手柄ですね。」と言った。
宮川は、「橋詰くんは伝説の刑事になるかもしれない。」と答えた。
木村が、「ナターシャさんが隣の部屋にいる、呼びましょう。」と言うと、
宮川は、「そうですね。」と言い、入口で護衛をしている警察官に、「ナターシャさんを呼ん
でくれ。」と言った。
しばらくするとナターシャが部屋に入ってくる。そして、「宮川さん、私たちはまた怖い目
に逢いました。」と言った。
宮川は申し訳なさそうな顔をして、「私たちが責任を持ってガードいたします。」と再び言っ
た。
木村は、「私の命があるのも宮川警部のお陰です。」ともう一度言った。
ナターシャは納得したような顔をして、その話を聞いていた。
宮川が、「いよいよ、記者会見をしようと思う。捜査上の問題でフリーメイソンと安東組の
ことは伏せて欲しい。」と言った。
木村は、「分かりました警部、キリストのことだけを発表しましょう。」と答える。
宮川が、「記者会見は
10
作品名:ダヴィンチコード イン ジャパン 作家名:HIRO サイトー