ダヴィンチコード イン ジャパン
ているようだ。」と言った。
青森を出てから2時間ぐらい経った頃、車列は国道454号線との交差点に達した。
そこで右折し、新郷村に向かう。
454号線に入ると水田地帯が広がった。
ナターシャが、「ここも昨日行ったところと同じお米が取れるのですか。」と聞いた。佐山が、
「私は詳しくないが、たぶんそうでしょう。」と答えた。
更に進むと木村が緊張した表情になる。
キリストの墓5kmという標識があった。
郵便局の先を左に曲がるとおみやげもの屋がある。
その前を車列が通過すると、人々が珍しそうに家から出てきた。
しばらく走ると、キリストの墓の駐車場の前に出た。
佐山が、「到着しました。外では帽子を取らないでください。」と言った。
前後のパトカーから、征服の警察官が3人ずつ降りて来て警備を始める。
3人はゆっくりとワゴンを降りた。
ナターシャが、「トイレに行きたいのですが。」と言うと、佐山が、「私も一緒に行きます。」
と言って、二人で駐車場にあったトイレに行った。
木村は車の中で二人を待った。
二人が戻ると3人でキリストの墓に向かう。
警察官に囲まれて、山に沿った道を登っていく。
しばらく登り、折り返して更に登っていく。
坂を上りきると頂上の平坦な場所に出た。
遠くの小山の上に木の十字架が向い合わせに立っている。
三人が平坦な場所の中心辺りにさしかかった。
その時木村とナターシャが同時に、
「ウォー。」という大声を上げた。
二つの十字架の間にキリストが立っている。
木村とナターシャは帽子を飛ばして走り出した。
キリストは十字架の間に立ち、
天を指差している。
木村とナターシャが小山の下まで達すると、
キリストはゆっくりと天に昇って行く。
二人は小山の階段を駆け上がり、
キリストにすがる。
小山の上はオーラーが射し、光輝いていた。
二人とも十字を切り、
キリストを見上げた。
キリストは天に昇りながら、
周りを光で包み込んだ。
二人は光に包まれ、放心状態になった。
キリストは上から二つの十字架の真ん中を指差す。
そこには3人の人間の姿がある。
交通事故で亡くなった木村の両親と、
チェチェンで戦死したナターシャの父親であった。
二人は3人に駆け寄った。
木村は両親に抱きついている。
ナターシャも父親にすがり付いている。
無言のうちにしばしの時間が過ぎる。
キリストが手招きをしている。
3人はキリストの手招きに従い、
キリストの場所まで昇っていく。
木村とナターシャは目に涙を満たし、
3人を見送っている。
キリストと3人は更に天に昇っていく。
木村とナターシャは何度も十字を切り、
十字架の方を見ている。
佐山は二人を追いかけて小山の下まで行った。
佐山にはキリストの姿は見えない。
しかし小山の上の十字架に辺りが、明るくなっているのは見えた。
木村とナターシャは、まだキリストと3人を見送っている。
キリストと3人は木村とナターシャに手を振りながら、
天に昇って行った。
キリストと3人が天に昇ると、
あたりに甘いバラの香りがしてきた。
佐山が恐る恐る二人に近づく、
佐山も甘いバラの香りを嗅ぎ、不思議な感覚をなった。
三人は小山の上の十字架に前にしばらく留まった。
甘いバラの香りが消えかかったとき、
佐山が近寄り、二人の手を強く握った。
そのとき木村とナターシャは我に返り、佐山の手を握り返した。
木村とナターシャは十字架の前でもう一度十字を切り、
ゆっくりと小山の階段を下った。
階段を下りきり、平坦な場所に着いたとき、
どこからか、「パン。」という乾いた音が聞こえた。
次に一瞬、木村が右胸に手をやり、土の上に倒れた。
警備の警察官が飛んできて、
拳銃を抜き、木村の周りを固める。
一人の警察官が無線で応援を頼む。
佐山は木村に走りより、急いで頭に帽子をかぶせた。
そしてナターシャにも、帽子をかぶるよう言った。
スナイパーはもう一発撃ってきた。
警備の警察官の足に当たり、警察官は重症を負った。
遠くで何発も銃声が聞こえる。
誰かがスナイパーと応戦しているようだ。
しばらくすると、警察のヘリが飛んできた。
急いで木村、ナターシャ、佐山と足を撃たれた警察官を乗せ、その場から飛び去った。ヘリ
には救急隊員が乗っていて、木村と警察官の手当てを始める。
ナターシャと佐山は心配そうにその様子を見ている。
救急隊員が佐山に、「二人とも命の心配はない。」と告げた。
ナターシャと佐山は安心した表情になり、初めて木村に話かけた。
ナターシャが、「木村さん、大丈夫ですか。」と尋ねると、
木村は、「宮川警部の防弾チョッキのお蔭で命拾いをした。」と言った。
救急隊員が木村に、「命に別状はないが肋骨にひびが入っている。」と言った。
もう一人の救急隊員が警察官の足に包帯を巻いている。
そして、「この人の方が重症だ、青森中央病院に急いで行こう。」と言った。
青森中央病院に着くと、別の大型ヘリが来ていた。
木村、ナターシャ、佐山はその大型ヘリに乗り換え、
直接東京に戻ることになった。
宮川の指示で、木村が軽症だったため、
警備しやすい東京の警察病院まで連れて来いとのことであった。
大型ヘリはすぐに出発し、夕方7時頃には飯田橋の警察病院に到着した。
警察病院に着くと特別室が二つ用意してあった。
部屋の入口を警察官が警備している。
三人ははじめの部屋の中に入った。
しばらくすると医師が入って来て、佐山に、
「木村さんのレントゲンを取るのでレントゲン室に来て下さい。」と言った。
佐山は、「はい。」と返事をして、木村と共にレントゲン室に行く。
ナターシャは部屋に残った。
結果は良好で、肋骨2本にひびが入っているだけであった。
その日は木村がはじめの部屋で、ナターシャと佐山は次の部屋で休むことになったが、ナター
シャが佐山に、「私は木村さんが心配なので、ちょっと隣の部屋に行ってきます。」と言い、木
村の部屋に行った。そして木村に寄り添い、着替えを手伝った。
木村は肋骨にひび入っていたため、うまく動けずなかなか着替えが出来なかった。
ナターシャが、「木村さん、私が手伝いますからズボンを脱いでください。」と言うと、
木村は恥ずかしそうに、ズボンを脱ぎ始めた。
ナターシャがズボンの先を引っ張ると、一気にズボンが脱げ、木村はパンツひとつになって
しまった。
ナターシャはそれを見てにこっと笑い、木村に寄り添ってきた。
木村はナターシャの熱い感情を感じたが、肋骨のひびのため動きが取れず、ナターシャに、「ス
パシーバ(ありがとう)。」と言い、自分でパジャマを着始めた。
作品名:ダヴィンチコード イン ジャパン 作家名:HIRO サイトー