ダヴィンチコード イン ジャパン
そのとき木村は、「地方警察はのんびりしているな。」と思った。
木村は戸来に、「警部補、私はシャワーを浴びて休みたいのですが、」と言うと、
戸来が、「分かりました。」と答えて、電話をする。
しばらくすると婦人警察官がやってきて、「こちらです。」と木村を案内しようとした。
そのときナターシャも、「私もシャワーを浴びたいです。」と言って、木村と一緒に地下のシャ
ワー室に行った。
二人が出て行くと、橋詰が戸来に、「安東組の依頼で、暁ジョーという第一級のスナイパー
が動いている。きわめて危険な状況です。」と言った。
戸来は、「俺も暁ジョーの名前は聞いたことがある。あの1,000m先の
10cmの的を確
実に打ち抜く奴だろう。」と答えた。
橋詰が、「警備計画はどうですか。」と聞くと、
戸来は、「亀ヶ岡までは片道2時間、新郷までは片道3時間と言う所だ。パトカーを前後に
付け、白バイも付けよう。」と言った。そして、「新郷が特に危険だ、山が多いので隣の山から
狙われると困る。」と続けた。
橋詰が、「警部補、人員は何人ぐらい出していただけますか。」と聞くと、
戸来は、「明日は特に何もないから
10
人出そう。」と言った。
橋詰が、「警部補、もう一台車を出してもらえないですか。」と聞くと、
戸来が、「いいです。」と言い、「その車は何に使うのか。」と聞いた。
橋詰は、「その車には僕が乗ります、暁の狙いそうな場所を事前に調べたいのです。誰か地元
に詳しい人を一人付けてくれませんか。」と言った。
戸来は、「分かった、明日朝までに選んでおく。」と言った。
戸来が確認するように、「目隠しをしたワゴンに佐山さんと二人が乗るのだね。」と聞くと、
橋詰が、「そうです、前後のパトカーに乗る警察官、運転する警察官にも防弾チョッキをお
願いいたします。M16
、フルメタルジャケット(貫通性の高い弾丸)に耐えるものです。」と
言うと、戸来が頭を抱え、「そんな強力な防弾チョッキをここにはない。」と言った。
橋詰が、「自衛隊に借りましょう。彼らは持っている。」と言うと、
戸来は、「誰に頼めば貸してくれるのだ。」と言った。
橋詰が、「県知事に頼み、駐屯地の司令官にお願いすれば貸してくれます。」と答えた。
戸来は、「すぐに手配しましょう。」と言った。
それから橋詰が、「宮川警部から二人には暁ジョーのことを知らせないで欲しい、と言われ
ています。」と言うと、
戸来は、「宮川さん元気か、久しぶりに会いたいな。あの人は本物だよ。」と答えた。
橋詰は、「宮川警部はとても元気です。私も尊敬しています。」と佐山の顔を見ながら言った。
佐山も、「うん。」とうなずき同意した。
戸来は、「本部長に防弾チョッキの件を頼む。」と言って電話を始める。
橋詰と佐山は、「私たちはそろそろ休みます。」と言って部屋を出ようとすると、
戸来が電話の受話器を持ちながら、「取調室は4階だ。」と言った。
4階には小さな取調室がいくつも並んでいた。
その前にさっきの婦人警察官がいて、二人を部屋に案内してくれた。
ナターシャと木村はもう休んでいる。
橋詰が部屋に入ると、簡易ベッドが部屋いっぱいに置いてあり、その上に毛布とペットボト
ルの水が用意してあった。
橋詰と佐山もその日は朝早くから忙しかったこともあって、そのまま休むことにした。
亀ヶ岡遺跡での調査
9月
23
日 午前8時
木村はノックの音で目を覚ました。
ドアを開けると婦人警察官が入って来て、「朝食が用意してありますので、5階に来てくだ
さい。」と言った。
木村は、「はい。」と答えて部屋を出て洗面所に行く。洗面所では3人が歯を磨いていた。
木村が、「おはようございます。」と挨拶すると、
3人も、「おはようございます。」と挨拶を返した。
4人は歯を磨いて顔を洗い終わると、5階の部屋に行った。
部屋では戸来ともう一人の私服の刑事が待っていた。
戸来が、「こちらは鳥栖刑事です。橋詰刑事と一緒に行動してもらいます。」と紹介した。
鳥栖は、「私は鳥栖清と申します、宜しくお願い申し上げます。」と言って全員と握手した。
戸来が、「自衛隊から防弾チョッキが届いたらすぐ出発する。」、「それまでに食事を済ませて
くれ。」と言った。
テーブルの上には、山積にされた手作りおにぎりと味噌汁が用意してあった。
戸来は、「みなさん座って食べてください。」と促した。
みんなはその言葉に従い席に付き食事を始める。
鳥栖がたどたどしい英語でナターシャに、「あなたはどちらから来ましたか。」と聞いた。
ナターシャが、「私はロシアのサンクトペトロブルグから来ました。」と答えると、
鳥栖が、「エルミタージュのある町ですね、私も行ってみたいです。」と言った。
ナターシャは味噌汁を飲みおにぎりを食べながら、「このご飯はとても美味しいです。」と言っ
た。
すると戸来が、「これは青森の“むつほまれ”です。」と自慢げに言った。そこでドアがノッ
クされる音が聞える。
佐山がドアを開けると、婦人警察官が全員分の防弾チョッキを持って入って来た。そして、「警
部補、今自衛隊から届いたのでお持ちしました。」、「他の警察官は付け終わっています。」と言っ
た。
戸来は、「ご苦労様。」と言って、鳥栖に防弾チョッキを付けるよう指示した。
戸来は、「橋詰くん、君たちはもう付けているのだよな。」と聞くと、
橋詰が、「はい。」と答えた。
戸来はあまった防弾チョッキを見て、「僕もつけて見るか。」と笑顔で言った。
4人が同じ帽子をかぶると、
戸来が、「その帽子をかぶると誰が誰だか分からなくなるね。」と言うと、
橋詰が、「宮川警部の考えで、それが狙いなのです。」と言った。
戸来は、「うん。」とうなずき、「宮川さんらしいな。」と言い、そこに車の用意が出来ました
という連絡が入り、全員1階に向かった。
1階に着くと、橋詰と鳥栖がパトカーでない車に乗り込み先に出発した。
木村、ナターシャ、佐山の3人は、急いで目張りしたワゴンに乗り込んだ。
3人が乗り込むと、白バイを先頭に、前後をパトカーで固める車列をつくって出発した。
県庁の前を通り、国道103号線を右に曲がり東北道に向かう、青森中央インターから東北
道に入り、スピードを上げ津軽に向かった。
30
分ほどで浪岡インターチェンジに到着した。浪
岡インターで東北道を降り、国道101号線を津軽に向かう。
ナターシャが前に見える大きな山を指差して、「あの大きな山は何という名前ですか。」と聞
いた。
佐山が、「あの山は岩木山といい、青森県で一番高い山です。」と答えた。
五所川原を過ぎ101号線を進むと、津軽平野の田園風景が見えてくる。
ナターシャが、「さっきのお米はここで作っているのですか。」と聞くと、
作品名:ダヴィンチコード イン ジャパン 作家名:HIRO サイトー