ダヴィンチコード イン ジャパン
二人も同意してモスクワに戻ることにする。出口に向かって歩き出す。
出口の所にまたラーメンマークがあった。
木村はナターシャに、「ラーメンマークがあった。」と大声で言った。
ナターシャも、「やはりここにもラーメンマークがあったわね。」と答えた。
マルスキーには、二人が何を見付けたかよく分からなかった。
ラーメンマークは出口の柱に縦に付いていた。
出口を出ると、マルスキーが腰に手をやり緊張する。
3人は早足で車の所まで行く。
急いで車に乗り込み出発した。
しばらく走ると、マルスキーが車を止めて外に出てあたりを見廻した。
特に異常はなさそうである。
マルスキーは車に戻り、モスクワへ急いた。
マルスキーがどこかに携帯電話で連絡をしている。
午前中に来た道を戻り、2時間ほどでKGB本部に戻った。
入口にレフチェンコが出迎えに来ていた。
KGB本部に着くと、車を入口近くに止め急いで中に入る。
マルスキーは二人がビルに入ると帰ろうとするが、
木村とナターシャは駆け寄り、今日のお礼を丁重に述べた。
マルスキーは、ちょっとはにかみ、二人と握手をして出て行った。
レフチェンコが、「セルギエフ・パサードはどうでしたか。」と木村に聞いた。
木村は、「素晴らしい所でした、ラーメンマークも見付けました。」と言った。
レフチェンコはうなずきながら、「夕食の用意ができております、9階へ行きましょう。」と
言い、「今日はまた鮨を用意いたしました。」と言い足した。
木村は、「この前の鮨はとても美味しかったです。」と返事をした。
そのときレフチェンコが、「明日リガチョフさんが、昼食を一緒に食べたいと言っておりま
す。」と言った。
木村は、「リガチョフさんには大変お世話になっております、明日を楽しみにしています。」
と答えた。
ナターシャも、「ユーリーと会えることは嬉しいです。」と言った。
それからレフチェンコはオフィスに戻り、二人は食事を始める。
木村が用意された日本酒を飲みながら、「ロシアのスタイルは日本とどこか似ている。」、「た
とえば教会で十字を切った後、礼をすることや、今日見たイコンが仏教の三尊仏に似ているこ
となどです。」と言うと、
ナターシャは、「それは歴史的に近いからではないかしら。」と答えた。
木村は卵のにぎりを食べながら、「こんなに日本とロシアは近い関係であるのに、なぜ政治
的には遠いのだろうか。」と言った。
ナターシャはその意味が良く分からなかったようで、不思議そうな顔をしていた。
ナターシャがマグロのにぎりを食べながら、「ルブリョンのイコンのどこが仏教の仏に似て
いるのですか。」と聞くと、
木村は、「仏教に三尊仏というものがある。仏が3体並んでいる、そして中心の仏は左右の
二体より高い位置にある。それがルブリョンのイコンと似ているのです。」と答える。
ナターシャは、「私も、三尊仏を見たいです。」と言った。
木村が、「ナターシャさんは日本に行ったことがありますか。」と聞くと、
ナターシャは、「ありません。」と答えた。
木村が、「ぜひ日本に来てください。」と言うと、
ナターシャは、「機会がありましたら、ぜひ行きたいです。それから桃子さんにも会ってみ
たいです。」と答えた。
木村は一瞬考えた後、「セルギエフ・パサードの聖水は何にいいのですか。」と尋た。
ナターシャは笑顔を浮かべながら、「万病に効く、と言われております。」と答える。
木村は、「僕は今日飲んだので、当分病気の心配はないな。」と同じく笑顔を浮かべながら言っ
た。そして木村は冷めた日本茶を飲みながら、「そろそろ部屋に戻りましょうか。」と言い、「明
日はもう一度、資料を見直して見ましょう。」と言い足した。
ナターシャは、「うん。」とうなずき、二人は部屋に戻り休んだ。
モスクワから東京へ
9月
10
日 午前8時
木村はドアのノックの音で起き上がった。簡単に朝食を済ませ、ナターシャと地下の資料室
に向かう。
木村はナターシャに、「今日は資料を見直したい。」と言うと、
ナターシャも、「そうしましょう。」と同意した。
まず木村は竹内古文書の再点検を始めた。
ナターシャはダヴィンチの資料の見直しを始めた。
木村が竹内古文書を見始めると、
神武天皇から始まる日本の歴史が延々と書き記してあった。
またこの文献の信憑性に関する資料もあった。
山崎鐵丸による、「竹内家の記録。」に関する批判文献や、
狩野亨吉による、「天津教。」の批判文献などがあった。
しかし、キリストの来日の関する批判文献はなかった。
木村はその資料を読みながら「キリストの来日。」が真実であることを実感した。
ナターシャは、ダヴィンチがフリーメイソンのメンバーであったという資料を持ってきた。
木村はその資料を見ながら、「ダヴィンチの時代には、フリーメイソンはそれほど悪い団体
じゃなかったのではないか。」と言った。
ナターシャも、「私もそう思います。ロンドンの株式市場の拡大に伴い、フリーメイソンは
変身していったのではないでしょうか。」と言った。
その話をしているとき、レフチェンコから電話は入る。「リガチョフさんが来ています。9階
のレストランで昼食を取りましょう。」と言った。
木村は、「分かりました、すぐに9階に行きます。」と言った。
ナターシャにその旨を伝え、二人で9階へ向かう。
二人が9階に着くと、リガチョフが入口で待っていた。
木村は、「ドーブルウィ ヴェーチェル(こんにちは)。」とリガチョフに挨拶し握手を求めた。
ナターシャもリガチョフと挨拶を交わし、握手をした。
リガチョフが二人をテーブルに案内する。
木村にはボルシチとタンの煮込みと黒パン。
リガチョフはボルシチとキエフカツレツと黒パン。
ナターシャはシーというアイボリー色のスープとゴルブツイ(ロシア風キャベツロール)。
また同じメニューが用意されていた。
木村がリガチョフに、「さすがに私たちの好きなものを忘れていないようですね。」と言うと、
リガチョフは少し照れた様子を見せた。
二人がテーブルに着くと、リガチョフがミネラルウォーターを二人のコップに注ぎながら、
「資料の調査はどうでしたか。」と切り出した。
木村が、「いろいろなことが分かりました。」と言って、ボルシチにスミターナ(サワークリー
ム)を入れながら、
「竹内古文書にあるキリストの来日は事実のようです。」、
「そのことをダヴィンチは知っていた。」、
ボルシチを口に運びながら、
「ダヴィンチはそのことをモナリザと2つの聖母の絵に託した。」、
「モナリザの頭の右上に青森の地図と同じ模様がある。」、
「エルミタージュにある2つの聖母図はもっと興味深い。」、
二人は木村の話に引き込まれ、食事をしながら黙って聞いている。
作品名:ダヴィンチコード イン ジャパン 作家名:HIRO サイトー