ダヴィンチコード イン ジャパン
に言った。
木村は半信半疑でその説明を聞きながら、「キリスト教会はどこに行ったらいいかなあ。」と
尋ねた。
中年の運転手は、「そうだな、アストリアの前にイサク聖堂という教会がある、そこなら歩
いていける。」と答えた。
木村が、「そこがいい、ホテルで聞けば場所が分かるかな。」と聞き返すと、
運転手は即座に、「これからそこを廻って行く。」と答えた。
車がイサク聖堂の前に着くと、木村は、「よし、ここでいい。」と言い、アストリアホテルの
場所を尋ねタクシーを降りた。そしてイサク聖堂のクロークにスーツケースを預けた。
まだ朝9時である。
木村はチケットを買って教会の中に入るが、朝早いため人はほとんどいない。教会の中は広
く、ドーム状天井には見事なキリストの絵がある。
木村は、「バチカンのサンピエトロ寺院みたいだな。」と囁きながら、1枚
の大きなキリストのイコン(木に描かれた絵)の前に進む。
そのイコンの前で、木村は、「あー。」いう大声を上げる。キリストが木村
の前に飛び出して来た。
木村の後に1m60cmぐらいの背丈で30代前半の女性がいた。やはり
飛び出して来たキリストの姿を見たようで、ビックリして、後に転んでしま
った。
木村はこの女性に手を差し出す。
女性は、「スパシーバ(ありがとう)。」と言った。
木村は、「あなたもキリストを見ましたか。」と英語で尋ねると、
その女性は、「ダー(はい)。」と答えた。
そこで、二人は息投合する。
木村がイコンの上を見上げるとそこには、見覚えのある模様が連なっていた。
木村は、「あー、ラーメンだ。」と声を上げた。
木村がよく見ると、それはまさしくラーメンどんぶりのマークだった。
フリーメイソンの陰謀
木村の出会った女性はナターシャ・グレゴリアといい、木村の泊まっているアストアホテル
の広報部に勤めていた。サンクスペトロブログの出身で、名門サンクトペトロブルグ大学を卒
業し母親はその大学病院の歯医者であった。
木村は、「始めまして僕は木村孝と申します。」と自己紹介をした。
ナターシャも、「私はナターシャ・グレゴリア。」と答え、二人はどちらが始めるともなく握手
を交わした。
木村はナターシャに、「あなたは今までにもキリストの姿を見たことがありますか。」
と尋ねると、
ナターシャは、「はい、何度もあります。先日もここの同じ絵からキリスト様がお出になる
のを見ました。私の父がグルジアで戦死して以来、何度も見ました。不思議な感覚です。」と
答えた。
木村も、「僕も同じだ。」と即座に言って、「2年前交通事故で両親を亡くしました。その後
で日本にあるキリストの墓に行ったとき、はじめてキリストの姿を見ました。」、「それから2・
3日前エルサレムのゴルゴダの丘で見ました。そのとき、キリストがこの町の方向を指差した
のでここに来ました。」と答えた。
ナターシャは興味深くのその話を聞いた後で、「キリスト様の墓が、日本にあるのですか。」
と尋ねた。
木村は、「僕も詳しい歴史は知らないのですが、青森にあります。小山の上に木の十字架が
2本差してあります。その前に教会があり、昔キリストが青森を訪れたと記るしてありました。」
と答えた。
それから木村は、「ゴルゴダの丘でキリストの姿を見て以来、変な黒服・黒ネクタイ・黒メ
ガネの男につけられている。」と言った。
するとナターシャも、「私もその男なら何度も見たことがある。」とうなずきながら返事をし
た。そして「何かイギリスにキリスト様で儲けようという団体があって、何かとキリスト様の
ことに注文をつけてくる。」、「私の大学の同級生にユーリーという大統領補佐官になった人が
いて、その人にその話をしたら。」、「その妙な団体はテンプル騎士団の流れをくむ、フリーメ
イソンとという団体で、今でもヨーロッパで絶大な権力を誇っている、と言っていた。」、
そこで木村が口を挿む、「僕は貿易会社の穀物部に勤めている。その名前なら聞いたことが
ある。ロンドン株式市場では、フリーメイソンが動いたとの情報で相場が変わってしまうらし
い。」、「そのフリーメイソンが、シカゴの穀物市場にもたびたび登場して相場を動かしている。
10億ドル規模の資産をもっているらしい。」と言うと、
ナターシャは、「そんな凄い団体なの、私怖いです。」とびっくりした表情をした。そして続
けて、「ユーリーに電話してみる。」と言い、
その場から携帯電話をかける。
その後で、「ユーリーが一緒に昼食を食べようと言っている。」と木村に言った。
木村が、「OKと。」と目配せをすると、
ナターシャがユーリーと話し電話を切ってから、「うちのホテルで昼食を食べましょう。」と
言った。
木村が、「どこのホテルですか。」と尋ねると、
ナターシャは、「アストリアホテル。」と答えた。
木村が、「そこは僕が予約したホテルだ。」と言うと、
ナターシャは、「あなた随分お金持ちなのね。私アストリアの広報部に勤めているの。」と答
えた。
木村も、「それは偶然だなあ。」と言った。
木村は続けて、「このイクサ聖堂にあるマークは、日本にあるラーメンというヌードルの器
に付いているマークと一緒だ。」と言うと、
ナターシャが、「そのマークなら、サンクスペトロブルグのどこにでもある。エルミタージュ
に行けばたくさんあります。」と答えた。
続けて、「ユーリーとの約束は午後1時なのでこれからそのマークを見に行きましょう。」、「エ
ルミタージュはここから歩いてすぐそばです。」と言った。
木村も、「ぜひ行きましょう、僕もそのマークを見たいです。」と答えた。
それから二人はイクサ聖堂を出て海の方に歩き出す。
10
分ほど歩くと、エルミタージュ美術館の前に出た。全体が緑色の建物で、前に大きな広場
がありその真中に高い塔が立っている。
木村は、「美しい所だな。」と一言もらす。
ナターシャが、「ここは皇帝の冬の宮殿だったの。」と説明した。そして、「反対側が川になっ
ていて、そこからピョートル一世の宮殿にジェットボートで行ける。」「そこにもマークはたく
さんあります。」と言った。
木村は、「うんー、」と答え、「とりあえず、エルミタージュのマークを見に行こう。」と言った。
木村が入口のゲートで切符を買おうとすると、
ナターシャが、「待って、私が買うから。」と言って窓口に何かパスのようなものを見せた。
ナターシャが、「100ルーブルです。」と木村に言い、
木村は財布から現金を出して渡した。ここはロシア人と外国人の入場料が違うらしい。どう
もロシア人の入場料で切符が買えたようだ。中はとても広く、1日では見切れそうになかった。
ナターシャは館内の展示物の説明を始めようとするが、
木村が、「ラーメンのマーク場所に行こう。」と促し、
ラーメンの部屋に急ぐ。
二人はかなり大きな広間のような部屋に行った。
作品名:ダヴィンチコード イン ジャパン 作家名:HIRO サイトー