革命
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テオドールはビオレッタをいつもの屋敷へと案内した。少しばかり古めかしいが手入れの行き届いたその屋敷は、テオドール達商人が3年前まで大きな会合を開く際に使っていた場所だった。現在は新しく建てらてた邸宅の方にその役目は移り、ここはテオドール家の使用人が定期的に掃除や雑用を済ませに来る以外は、実に静かなものだった。
ビオレッタはテオドールの事は決して好きではなかったが、この屋敷は大好きだった。誰もいない、誰にも縛られない、作法も、身なりも、どんな嬌声を上げようと、どんなにあけすけに笑おうと、誰にも咎められないこの場所がたまらなく愛おしかったのだ。
「さ、テオドールさま……」
ビオレッタは優雅な足取りで、ベッドルームへと彼を導いた。自分は貴族の娘なぞでは無いのだから、あからさまに男を誘い、そうして満足させるのが仕事であると――ビオレッタはいつも自分に言い聞かせていた。ビオレッタのそのある種誇りにも満ちた言動は、彼女の人気の一つでもあった。