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革命

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 観劇は退屈なものだった。ビオレッタにとってそれは、毎日の通過儀礼のようなものでしかなかった。ただ、舞台の上に立つ女優よりも自分が美しい事を確認し、満足出来ることのみ、唯一価値があると思われた。

 観劇が終われば、テオドールは‘いつもの’場所に彼女を連れ込み、そこでまずは酒などを嗜んでから、その後一夜を共にするのだ。≪今日はどんな‘遊び’をしようかしらね≫そんな風に思案しながら、幕が下りるのをビオレッタは待ち続けた。
 

 *****

 舞台に幕が降り大きな拍手が劇場を包み込むと、ビオレッタはスッと優雅に立ちあがった。

「わたくし達はこれで失礼しますわ。ガエル男爵、ドリーヌ、御機嫌よう」
「ええ、テオドール様。ビオレッタをよろしくお願いします」
「お任せあれ、ドリーヌ嬢」

 ビオレッタの挨拶を受け、立ち上がったドリーヌの手にテオドールはそっとキスをすると、ビオレッタの手を恭しく取り、彼女をホールの外へと導いた。まるで本物の恋人同士のように仲睦まじく歩く二人であったが、ビオレッタにとってそれは本当にどうでもいい事だった。彼女は自分が‘娼婦’である事を自覚していたし、結局のところ確かな身分だって無い、空虚な存在であると己を認識していた。それでも美しささえあれば、彼女は‘女王’として君臨していられた。≪まるで砂の城の女王だわ≫そう内心呟くと、ビオレッタは彼女に出来得る最も美しい笑みを浮かべてテオドールを誘った。

「テオドール様、早く参りましょう。わたくし、あなた様と共に過ごせるのを心待ちにしていましたのよ」
作品名:革命 作家名:有馬音文