革命
「さあ、入ろうか」
「ええ」
男達が彼女達の手を取り、劇場内へと誘う。そんな彼らの様子を羨望の眼差しで見つめる群衆。ベッドで女を征服しているその時と同等――いや、あるいはそれ以上の快感がその瞬間に男達の心を支配する。高い金を代償にして手に入れる女は、体だけでなくその自尊心をも高めてくれるのだと、だから彼女達を買う男共が後を絶たないのだという事をビオレッタは男達自身よりもはるかに理解していた。≪私は決して落ちるわけには行かないんだわ。ドレス、宝石、化粧、そのどれもが高級で流行にそっていなければ、私の価値は格段に下がってしまう。そうなったらまた昔に逆戻りなんだから。そんなのは絶対に嫌≫ビオレッタにはとてつもない額の稼ぎがあったが、彼女が客の数を減らす事が出来ないのは、こういった事情からだった。
劇場に入ると最も等級の高い席に彼女達は着いた。そこが彼女達の特等席なのだ。中途半端な貴族の娘なぞより、余程丁重に扱われる存在――それがビオレッタだった。