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革命

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「どういうつもりかしら?」

 部屋に入ってきたアルノーを見るなりビオレッタは冷たく吐き捨てた。

「空を見るのに何の理由がありましょう」
「空を見るのにだって理由はあるのよ。人間はね、どんな事にでも理由を付けたがる生き物なの」

 悪びれもせずにそう答えたアルノーに対し、ビオレッタも同じ調子で言葉を返す。
 だがアルノーは相変わらず優しい陽だまりのような眼差しをビオレッタに向けたままだ。

「ならば理由を付けましょう。そこに神がいるからです」
「神ですって?」
「あなたですよ、ビオレッタ」

 アルノーは真心をこめてその言葉を口にした。しかし次の瞬間、ビオレッタは激しく体を震わせたのだった。

「ほ、ほ、ほ! わたくしが神? ご冗談がお上手なのね。それともあのサロンでテオドール様が仰った‘女神’という意味かしら?」

 体を震わせ哂ったビオレッタだったが、アルノーは至って真剣であった。

「違います、そんな意味では断じてありません」
「では、どんな意味があるっていうの? アルノー坊ちゃん」

 ビオレッタはあからさまな蔑みを込めた目をアルノーに向けた。お前は男ではない、子供なのだと言い聞かせるように。

「アルノー坊ちゃんと呼ぶのはおやめ下さい」
「あら、ならあなたは今すぐにこの部屋を出ていくんだわ。だってこの部屋に入れる殿方は私の恋人か子供だけなんだもの」

 ビオレッタはもうこのアルノーという青年の前で自分を飾らなかった。それだけの価値をこの男に見いだせなかったからだ。ひどくあけすけに言われたアルノーだったが、彼が腹を立てる事はなかった。

「出てはいきません」
「どうして?」
「僕はあなたの恋人になるからです」
作品名:革命 作家名:有馬音文