革命
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早々と帰宅したビオレッタは乱暴にドレスを脱ぎ捨てた。
はぁーっと一つ長く息を吐くと、下着姿のままで何気なく窓に近付きカーテンの隙間から通りをそっと見下ろした。
「っ」
そこにはアルノーがいた。屋敷の下、窓からちょうど見下ろした位置に立ち止まり、じっとこちらを見上げていた。恐らくアルノーからはビオレッタが覗いている事は分かるまい。だがビオレッタの肌はひしひしと粟立っていった。≪一体何のつもりだろう。あんな風に立ち去ったのに、わざわざ後を付けて? いや、私の屋敷は誰でも知りうる事が出来る。でもそれにしたって……≫そこまで考えると、ビオレッタはすぐさまカーテンを閉めた。だが一切の光を遮断しても、アルノ―の視線からは逃れられた気がしない。じっとまだ見つめられている心地がする。
「一体なんだっていうの……」
静寂が怖くて自分の耳に届くように声を発した。
今までだってこんな風に追いかけまわされた事が無かったわけではない。でもそれも遠い昔の事。今のような高級娼婦と言われる身になり、そしてその客ともなれば執拗に追いかけまわすだなどという事は、恥ずかしい行為として誰もしてはこなくなっていた。代わりに溢れんばかりの贈り物を送りつけるのが主だ。≪なのに……≫居た堪れなくなって、ビオレッタはもう一度立ち上がり窓へと向かった。そっと見下ろすとアルノーはやはりまだ、そこにいた。