革命
「ではせめて、あなたが居たその大地に口づけする事をお許しください」
ここまでされるとさすがのビオレッタも怒りの中にわずかながら愉快な感情が覗き込んできた。
「ほ、ほ、ほ! どうぞご自由に。地面まではわたくしの所有物ではありませんもの」
ビオレッタのその答えに満足したように微笑むと、アルノーは地に顔をつけ大地に口づけした。
その様を黙って見守っていたビオレッタだったが、やがて飽きたかのように踵を返すと再び歩み始めた。
「ビオレッタ! 僕はあなたを愛します! 世界でただ一人! 僕が……! 僕だけがあなたを真実愛するのです!」
通りの真ん中でそう叫ぶアルノーだったが、ビオレッタの足が止まる事はもう無かった。≪あんな言葉を聞いたのはこれで何度目かしら。娼婦は真実愛される事はない。でもそれでいい。愛の無い政略結婚をしなければならない貴族のお姫様に比べたら、なんて私は自由だろう! そう、私は自由だ!≫そんな風に思いを巡らすと、心の片隅でドリーヌの笑顔が彼女の心を突き刺した。