革命
男に対してはどこまでも冷静でいられた。娼婦として生きてきた彼女は自分に向けられた男達のありとあらゆる感情を受け止めてきた。裏切られ憎まれ蔑まれ――そして愛されてきた。そんな中でいつしかビオレッタは男を愛する事が出来なくなっていた。≪……けれどドリーヌは違う。あの子は私とは違う。それでもまだ男を愛すことが出来る。私は――――≫そこまで考えるとビオレッタは唇を小さく噛みしめた。≪……革命。国家を覆す? そんな事はどうでもいいわ。私にとっての革命は――娼婦が‘本当の意味で幸せになれる事’よ。それは私自身には無理だけど、でもドリーヌなら。あの子なら叶えられるかもしれない。私はドリーヌに幸せになって欲しい。それがきっと私自身も救ってくれる≫一人きりの暗い室内で、ビオレッタは小さく十字を切ると決意を込めて祈りを捧げた。