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革命

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 自宅に帰り、髪をおろしドレスを脱ぎながらもビオレッタは心ここにあらずといった状況だった。
 マキシミリアンから要求された事は余りにも重たいものだった。

『君にはミシェル公爵の心を奪って欲しい』

 マキシミリアンの声が脳の裏側にいつまでも貼り付いている。公爵家の人間を引き込むだなんて、彼等はやはり革命とやらに本気なのだろう。しかし、なぜ? なぜ自分がその要とも言えるような役目を担わなければならないのか――ビオレッタは背筋が凍るような思いがした。
 ミシェル公爵と言えば国王とも並ぶ権力を持つと言われる大貴族だ。当然のように王制の利権を貪っている。そんな人間が革命などに加担するはずがない。しかし最近では何やら怪しい噂もあるらしく、それは王制を廃止し、名ばかりの平等の元に自分が最高位の権力を手に入れる為に画策しているとか――それは極々一部の人間の間だけで囁かれる黒い噂レベルのものであったが、どうやらそこを利用したいというのが革命家達の共通の思いらしい。
 
 断れば良い。ただそれだけの事だった。けれどそう思う度に、ビオレッタの網膜の裏側でテオドールの誘いに応じた時の、あの嬉しそうなドリーヌのはにかんだ笑顔が浮かびあがる。
作品名:革命 作家名:有馬音文