革命
「そんな……伯爵……! わたくしは今日も伯爵と二人っきりで過ごす事を奪われ、そしてまた次の機会も失ってしまうんですの? わたくしが何か失礼が御座いまして……?」
ビオレッタは綺麗な眉を寄せてマキシミリアンに哀願した。事実、2回も連続でキャンセルされてしまうだなんて、自分は何か大きな失敗をしたのだろうかと不安な気持ちが彼女の心を支配していた。
「君は何もしていないよ、ビオレッタ。私が君を可愛いと思う気持ちは全く変わらない。だが私ももう年だ。いつまで君を可愛がることが出来るか分からない。そしてそのアルノ―君は実に聡明だ。きっと君にとって光となろう」
ビオレッタを安心させるような穏やかな声でマキシミリアンは言葉を紡ぐ。しかし彼女にとっては冗談じゃ無かった。無かったが――マキシミリアン‘伯爵’に直々にそう言われては断る事など出来ようもなかった。
「……伯爵がそこまで仰って下さるのなら」
ビオレッタは渋々頷いた。このアルノ―とかいう若者には依然として興味は持てなかったが、今の自分の地位があるのは生理的に受け付けないような男とだって寝てきたからだ。たかだが一晩くらいの相手をしろと言われるのなら、そんな事造作もない。
「良かったじゃないか、アルノ―。次の木曜日、君は彼女を独占出来るぞ」
何がそんなに楽しいのか、実に愉快そうにテオドールがそう言った。