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革命

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 やがて馬車は見慣れた屋敷の前に止まった。心の中は不安でいっぱいだったが、そんな事は微塵も顔には出さず、むしろ尊大な態度で馬車を降りると、ビオレッタは一縷の迷いもなく門扉を開け、屋敷へと続く庭園内へと足を踏み入れた。
 空には美しい半月が出ていて、月明かりの下で何か決意めいたものを秘めた彼女の姿は見る者全てを虜にしてしまうであろう麗しさがあった。

「ビオレッタ、来てくれたんだね」

 ふいにそんな声が聞こえた。ビオレッタが辺りを見回すと、庭園の奥の方からテオドールがこちらへと向かって歩いているのが確認できた。

「ごきげんよう、テオドール様。素敵な月明かりですわね」

 ビオレッタはいつもの彼女と何ら変わらない調子でそう答えた。≪革命? 思想? そんなものに私は怯んだりなんかしない。私は私の仕事をこなすだけなんだわ。そしてその仕事の相手がいるかもしれない場所へ赴いた――それだけなのだから≫そんな風に考えて、ビオレッタはテオドールに向かって最高の笑みを作ってみせた。その大胆さにテオドールはますますこの女が‘革命’に必要だと感じた。

「みんな集まっているよ。君に紹介したい人間もいる。さぁ、どうぞ」

 そう言ってテオドールはビオレッタの手を取ると、そこに軽く口づけをしてから彼女を屋敷内へと導いた。
作品名:革命 作家名:有馬音文