革命
Quand le vin est tire, il faut le boire
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長い長い夜は明け、外はもうすっかり朝日が昇りきっていた。ビオレッタとドリーヌの二人はわずかばかりの仮眠を取ると(もっとも眠る事など出来はしなかったが)、テオドールの屋敷へと向かう身支度を各々始めた。
ドリーヌは自宅へと戻り、テオドールの屋敷へは別々に向かう事にした。二人で行動すれば、その分人目を引いてしまうだろうというビオレッタの判断だった。
≪さて――何を着ようかしらね。派手なドレスではこの場合、似つかわしくない気がするわ。とはいえ私の魅力を十分に引き出せる物でなくては。だって新しい客が転がってるかもしれないんだもの≫ビオレッタはそう考えると、深いブルーのドレスを手に取った。それは彼女の瞳と良く似た色で、胸は大きく開いていたが決して品の無いデザインではなかった。≪これでいいわね≫ドレスを決めると、ビオレッタは丁寧に髪に櫛を通し、控え目に結いあげた。
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日が暮れるとビオレッタは通りで馬車を捕まえ、テオドールの屋敷へと向かった。昨夜はテオドールと二人で通ったばかりの道を今日は一人、馬車に揺られながらなぞっていく。
あの屋敷が今では公には使われていない事を知っている者は多かったが、屋敷内で行われている淫蕩もまた多くの者の知る所だったので、ビオレッタが一人でそこに向かう事を不審がるものは特にはいなかった。≪隠れ蓑にでも使いたいのかもしれない≫彼女はふいにそんな風に考えた。毎週のように身分ある若者や地位のある伯爵が訪れる淫靡なサロン――そういった印象を付けるのに娼婦と言う女はもってこいだと思われた。