革命
「王制……?」
消え入りそうな声でビオレッタは小さく呟いた。
「そうだ、王制だ! あんなものは古い体制だ。これからは貴族や平民といった身分に関係なく、誰でも自由に政治に加わるべきなんだ。その為の‘革命’なのだ!」
まるで演説でもしているかのような大きな声で威勢よく言いきるテオドールを、ビオレッタは正面からじっと見据えた。≪社会が悪いから? だから私は――いいえ、違う。違うわ。社会のせいなんかじゃ無い。私は……私は……≫当惑するビオレッタの視線を真っ向から受け止め、テオドールは彼女に優しく微笑んだ。
「ビオレッタ、君は何も悪くはない。君に罪などありはしない――――迷っているのなら、どうだろうか? 明日はちょうど火曜日だ。もう一度この屋敷に来て貰えないだろうか? それだけでいいんだ」
「明日は……マキシミリアン伯爵のお相手をしなくては……」
「心配には及ばない。マキシミリアン伯爵も私達の仲間だ。伯爵には私から話をつけておこう」
「なんていう事……!」
マキシミリアン伯爵は王侯貴族にも縁が深い存在で、今年で53歳になる。若者達が熱病に浮かされたかのようなサロンでは無く、れっきとした伯爵――それもビオレッタの客の中でも特に身分も教養も知性もあるマキシミリアン伯爵までが、この‘革命’に名を連ねているという事実に、ビオレッタはわずかに身震いした。
「返事はいらない。ただ私達は皆、明日――君が来るのを待っている」