革命
ビオレッタにはテオドールの真意が読み取れなかった。≪彼は何を言っているのだろう? 革命? お坊ちゃんのごっこ遊びの延長かしら≫不審そうに眉をひそめ、テオドールの瞳を彼女はじっと見つめた。暫くの間、二人はそうやって見つめあっていたが、テオドールはやがて気まずそうに視線をそらすと、ビオレッタの腕から手を離した。
「どこから話せばいいかな――――そう、まずはこの屋敷についてだ」
テオドールは少しばかり逡巡した様子で言葉をつまらせたが、覚悟を決めたようにもう一度ビオレッタの瞳を捕えると、今度ははっきりとした調子でこんな事を言い出したものだから、ビオレッタも少しばかり興味が湧いてくるのだった。≪この屋敷? この屋敷がどうしたって言うの?≫ビオレッタは少しばかり沈黙し、ただ相手の言葉のみに耳を傾ける事にした。
「この屋敷は普段は誰にも使われていない――と君は思っているだろう。いや、君以外にも多くの人間がそう思っている。だが真実は違うのだ」
ゆっくりとベッドから身体を下ろすと、テオドールは軽い衣服を身にまとい、そうしてから意気軒昂と言葉を発した。
「ここは革命家たちが集まる秘密のサロンなのだ。毎週火曜日、ここは熱い思想に満ち溢れる! 君に想像出来るだろうか? あの熱気が! 未来を見据えた若者達のぎらぎらと光るあの眼が!」
そう熱っぽく語り始めたテオドールを見つめながら、≪火曜日……確かに火曜日にテオドールに呼ばれた事は一度もないわね≫とビオレッタは過去を遡り思案する。
「何について話し合うかは決まっている。‘革命’について! 議題はただそれのみ! ビオレッタ、君は今のこの社会は間違っていると感じた事はないか? なぜ自分がこんな思いをと絶望にくれた事は一度もないか? そんな事はないだろう! なぜなら私にだってあるからだ! いいかい、そんな事は恥でも何でもない。誰にだってある事なんだ! では何故、誰にだってあるのだろうか? それはこの社会が――つまるところ今の王制が悪いからなのだ!」