墓前にて
母が死んだ。
墓前には私と妻。
母は立派な人だった。私を連れて必死に生きてきた。
私の為だと言って働く母の姿は、堪らなく私の心を締め付けていた。
母は悪い姑だったのだろうか。嫁姑の関係は決して良好とは言えなかった。
妻は母が死んで内心喜んでいるのだろうか。
私にとって 母は大きな存在であった。良くも悪くも。
母は私の存在を人生の支えにしていたのだろうか。それとも重荷であったのか。
私を生み、育て、母は役目を終えて消えていった。
そして、今。妻の中に新しい生命が生まれようとしている。
私は父となり、妻は母となるのだ。