墓前にて
父が死んだ。
墓前には母と僕。
仕事先で呆気なく死んだ父。僕達には何一つ残さずに。
僕は父が好きではなかった。母は父を愛してはいなかった。
父は妻を愛していたのか。息子を慈しんでいたのか。
墓の前で僕は何も言わず、父の為に涙する事もなく。
僕は父が好きではなかった。しかし、僕の父は この人だけだった。
もう何も問い掛ける事は出来ない。男同士の語らいも出来ない。
僕の父は何処にもいないのだから。
母が墓前から立ち上がる。その目は父の墓石ではなく、明日からの日々を見据えている。
僕も立ち上がり、そして二度と振り返らなかった。
墓前には母と僕。
仕事先で呆気なく死んだ父。僕達には何一つ残さずに。
僕は父が好きではなかった。母は父を愛してはいなかった。
父は妻を愛していたのか。息子を慈しんでいたのか。
墓の前で僕は何も言わず、父の為に涙する事もなく。
僕は父が好きではなかった。しかし、僕の父は この人だけだった。
もう何も問い掛ける事は出来ない。男同士の語らいも出来ない。
僕の父は何処にもいないのだから。
母が墓前から立ち上がる。その目は父の墓石ではなく、明日からの日々を見据えている。
僕も立ち上がり、そして二度と振り返らなかった。