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アイツ恋愛

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「あなたたちカップルでもないのにくっつきすぎだし、仲良すぎよ。ちょっと見てるこっちのみにもなってよ」
 あたしは胸が詰まる思いだった。カップルでもない、でも仲が良すぎる―それってやっぱり変なのだろうか?
「ま、学校に遅れるし、三人で仲良く行きましょう。」
 結局百合はそういって、あたしと涼の間に入った。そして、ずっと涼と喋り捲っていた。つまりは、あたしと涼が一切喋れないようにした。胸の奥が、うずくような鈍い痛みを発していた。あたしは涼とはマネージャーの関係だから、仲がいいのは当たり前、と自分に言い聞かせた。

 それでも胸のざわざわは収まりそうになかった。

 そしてお昼。あたしと涼はたいてい一緒に食べていた。今日はたまたまあたしは委員会があったから、後で屋上にいく約束をしていた。

 あたしは屋上のドアを勢いよく開けた。あたしは立ち尽くしたままだった。そこには、仲良く弁当を食べている百合と涼の姿があった。二人は、あたしに始めは気づかなかった。だから、だから、仲良く話している姿をあたしは長い間見ていることになった。いや、大丈夫だ。あたしは自分に言い聞かせて二人に近づいていった。

「おっ、凛華!お疲れさん」
 始めに涼が気づいてくれた。あたしは笑って手を振った。そして走ろうと思った。百合が振り向いた。

 あのとき見た、思い切り歪んで、何かに強い憎しみを感じさせる反らしたくなるような強い視線―。

 あたしは凍りついた。
「ん?凛華、どうしたんだ?」
 のんきな涼の声がする。あたしはぎこちなく笑って、一歩一歩歩いていった。あたしは、怖くなった。百合は、あたしのことを憎んでいる。あの歪んだ瞳にある何かは、あたしだ。百合は、あたしが涼と仲良くしていることが気に食わない。それでも、好きなものはしょうがない。百合だってあきらめ切れないからこうしているんだろう。別に百合を憎む気持ちはない。でも、何で百合はあたしをこんなに憎むんだろう?あたしと百合は一切接点がないはず。この前初めて話した。憎まれる覚えも何かしらかかわった覚えもない。だから百合の気持ちは分からない。

 凍りつくような射抜く視線があたしの心にこびり付いて剥がれなかった。

 そして今、百合は隣にいる。涼とあたしと一緒に、なぜか帰っている。涼と百合が話すと、落ち着かない。切なくて妙に泣きたくなる。何よりも胸がざわざわする。そして妙にいらいらする。落ち着かないなら、涼と話せばいいのに。泣きたいなら、百合がいても涼の胸で泣けばいいのに。あたしは、素直になれない。
 素直になりたいのに。百合と話して欲しくない。あたしは涼がすきだっていえたらいいのに、いえない。

あたしってこんな意地っ張りだっけ?そんでもってこんなわがままだったっけ?

 あたしは自問自答を繰り返した。あたしは恋をしてから、自問自答が多くなった気がする。ナッキーにでも相談すればいいのに。多分、あたしのだした答えよりもっといいことを喋ってくれるだろう。なのに、あたしは今まで相談をしない。どうしてだろう?・・・多分、恋は自分自身の問題だからだと思う。だからほろ苦くて悲しくて悔しくて・・ちょっぴり甘いけど、全部、真っ白だ。素直だ。やましいことなんて一つもない。でも・・


なんで胸がざわざわするんだろう?


 あたしはまた自問自答を繰り返した。そのうちに、涼の家に着いた。

「じゃ、じゃあね。」
 あたしは涼にいつものように挨拶をした。胸はざわざわしたまんまだった。
「あぁ。」
 涼は優しく笑ってあたしの目を真っ直ぐ見て笑った。百合のことはちらりとも見ず、そして家に入っていった。

 涼はあたしのことだけを見て笑った。あくまでもあたしと帰っていたということなんだ。―ボーっとしていたあたしを、まさか気にかけていてくれたのかな?・・・あたし、期待してもいいのかな・・。

「おい、おまえ。」
 あたしは再び現実に引き戻された。

「な、なに?白戸さん」
 あたしはあくまで百合のこと「白戸さん」と呼んでいた。この人は自分が苗字で呼ばれるのが嫌いらしい。だからあたしは知ってて「白戸さん」といっていた。あたし、かなり性格悪いな・・。
それがあるからかどうかはしらないけど、百合はあたしにさっき以上に強い光りを向けた。あたしは視線を反らしそうになるのを辛うじて止めた。あたしが何をしたかは知らないけど・・・何も言わずにこんな視線ばかり向けてくるのは気に食わない。理由がないんだったらこんなことすぐに止めるべきだ。
「あんた、あたしの忠告が聞こえなかったの?」
 あたしは一発であのことだ、と分かった。
「聞こえてるよ。十分」
「じゃあ、なぜ今なお仲良くしているの?」
 あたしは言葉に詰まった。何で仲良くしているか―そんなこと分からない。あたしは涼を裏切った。そんなことは承知の上で涼と一緒にすごしていた。傷つけてしまったと分かっているのに、まだあたしは涼と過ごしたいと思っていた。
「あたしは、もう涼と友達に戻るから」
そんなこと、言える分けなかった。たとえ自分で決めたとしても。最愛の人を傷つけたとしても。
「なんか言いなさいよ。」
 百合は攻撃の手を弱めない。あたしは百合の興味を反らそうとある質問をした。
「なんで、白戸さんは涼が好きなの?何で付き合いたいの?」
 あたしは一番聞きたかったことを、あっさり聞いてしまった。それがあれば納得できるから・・というわけじゃないけど、なんとなく聞いてみたかった。
「わたしの胸のうちを、あんたに教えるわけないじゃない」
 あたしは予想通りの結果にさも驚かなかった。あぁそうと言おうとした瞬間―

「あたしの相手にならないあんたなんかに、教えるわけないじゃない。」

 百合はそういって笑った。あたしの心臓がうるさいくらいに脈打つ。冷や汗が出てくる。
「それって、そういうこと?」
 あたしはつとめて冷静で入れる分けなかった。百合はあまり付き合ってない人物だけど、的から外れたことは言わない。だから怖かった。あたしが、あたしでいなくなるような気がしてきた。
「あんたより、私は可愛いし細い。」
 あたしは正直拍子がぬけた。そんだけ自分に自信を持てる人もそう、いないと思う。だからあたしは拍子抜けした。正直言って笑いそうになった。
「あんた、馬鹿じゃないの?」

 思わずそういった。あたしは百合を真っ直ぐに見た。今度も百合はきつい光りを向けた。でもあたしは屈しなかった。怖いとおもわなった。
「後もう一つ。あんたより私に勝ることがある」
 百合はあたしの言葉なんかなかったことのように、続けた。

「わたしは、涼を裏切らない。あんたなんかよりずっと相応しい。それに、私は付き合いたいんじゃない。付き合うの。あんたみたいな人は無理に決まってんじゃん!邪魔な人はさっさと消えればいい!」

―こいつ―。

 あたしは目の前が真っ赤になっていくのを感じた。あんたに、あたしの何が分かるって言うの?裏切った。確かにあたしは裏切った。あいつは確かに可愛いし、細い。その点ではあいつのほうが相応しいかもしれない。
作品名:アイツ恋愛 作家名:Spica