政治・社会 憂さ ばなし 短編集
突き付けられた挑戦状(入試投稿)
私は京都大学で情報処理を教える教授である。
そしてCIA(公認内部監査人)の資格をも有している。
つまり、[内部統制]の知識を持つプロフェッショナル。リスクを事前に発見し、指摘・改善を提案するのが仕事である。
IT技術は目覚ましく進歩している。現在の技術で、大学入試という中での厳しい監督官の目をかいくぐって、果たしてカンニングは可能であろうか?
これに対し、挑戦状が突き付けられ、実行されてしまった。
『aicezuki』
―――行くぜCIA
2月、4つの大学での入学試験中に、試験問題が『ヤフー知恵袋』に投稿され、回答を得るという事件が12件あった。同じIDを使用している。
12月22日から1月5日の間にも某塾の試験問題が9件投稿され、これはデモンストレーションだったようである。
そして2月26日、京都大学の試験終了と同時に[学内の者]と名乗って[問題が投稿されている]とメールがあった。
これは明らかに当事者によるものである。なにより[学内の者]という言葉が示している。
彼は私に挑戦状を突き付けてきたのである。
自分自身のIT技術に関する知識の優越性を示すがために。
私は彼が誰なのかを知っている。
私を憎むもの・・・
私は彼を厳しく指導してきた。勉強第一として。
親を越えろ、と言い続けて・・・
私は、息子のリスクを見抜くことができなかった内部監査人である。
2011.3.01
作品名:政治・社会 憂さ ばなし 短編集 作家名:健忘真実