政治・社会 憂さ ばなし 短編集
財政破綻
ねぇ じっちゃん 押し入れの掃除しててこんな新聞が出て来たよ すごい数字が並んでいてママに聞いたら じいちゃんに聞いてらっしゃい って
【973,0000,0000,0000円】
いち じゅう ひゃく せん まん じゅうまん ひゃくまん せんまん いちおく じゅうおく ひゃくおく せんおく・・・えっとぉおくの次はぁ・・・そや ちょう じゅっちょう ひゃくちょう
ひぇぇ〜 きゅうひゃくななじゅうさんちょう円! ってなんのこと?
ん? あぁ まぁそこにおすわり・・・それにまつわる話をしてやろう
こほん
昔 むか〜し 借金大国があってな
大国といっても小さな小さな国じゃった
支出が収入の倍以上もあって 借金をして賄っていたんじゃ
毎年毎年借金を重ねて とうとう収入の20倍にまでなっていた
その借金の総額がそれ 973兆円 いうことじゃ
ギリシァやアイルランドが借金で国自体が破綻したんじゃが
その国は何倍もの借金をしていたにもかかわらず ほとんどが自国民からのものだったので まだ世界から信用もされていた
しかしそれも 瀬戸際じゃった
税金を上げて収入を増やすことを考えていたが すぐにというわけにいかなかった
大臣や官僚たちが顔をそろえ 毎日毎日頭をひねっていた
そこにひとりの知恵者がいてな
とんでもないことを思いつき 満場一致でそれにすがることにした
第2次世界大戦ごろ
政府は民間から多くの物資や労働力を調達した
すると民間には大量のお金が出回り 通貨流通量が増えないように国債の購入を奨励した
終戦直後はな 物がなくて値段は上がり 生活のために貯蓄を下ろし
政府は軍発注物資の代金を一挙に払ったため 一度に通貨供給量が増えた
ハイパーインフレというやつで 物価は200倍になり
同時に国債は紙くずになってしまった
そうしてからお金を回収していった
つまり 国家が財政破綻を起こすと ハイパーインフレが生じて国家の借金が返せるレベルに戻る ということじゃ
造幣の権限は財務大臣にあるんじゃが どんどん紙幣を印刷して
公共事業に投資し貨幣流通量を増やした・・・
後から回収していくつもりでな
まではよかったんじゃが その時代はな 貨幣は必要なかった
電子マネーや電子ペーパーになっておって 国民のほうが一枚上手で たいしてインフレにはならなんだ
物がまだまだ十分にあったこともあるがのう
おやおや 退屈な話に寝てしもたか・・・
それからどうなったかて?
直人は今や習慣になった
点心の水餃子を口にほおりいれ ゆっくり噛みしめてから
ぬるくなったプーアル茶を啜った
2011.1.29
作品名:政治・社会 憂さ ばなし 短編集 作家名:健忘真実