「 俺等の青春は LEGND になった 」 1
運ぶまではいい、まだいいのだが。問題はそのあとだ、どうやってあの小屋を直すんだ?
俺等の中に、もともな修理の知識を持っている奴なんていると思うか。
いやいないな、いる訳がないな。
…………大地はじっと浪を見つめた。
よく見れば英介も剣も浪を見つめていた、おそらくコイツ等も感づいたらしい。
「なぁ浪さんや。」
「んっ、なんだ大地。」
俺等は一歩、また一歩と浪に近づいた。
「おっ、おいお前等。」
浪は後ずさりし始めた。
地面に落ちていた木の枝がバキバキっと鳴っていた、たぶん俺等が踏んだからだろうな。
だが俺等にはそんな音は聞こえなかった。
聞こえたのは一つだけ、コイツを殺せという心の声だけだ。
何故ここまでするかって?
それは俺等の立場になればわかるさ。
俺等だけで修理なんてしたら確実に、確実に死人がでる。
「君たち、ここは立ち入り禁止って知ってるのかな?」
どうやらコイツの命は数分だけ、救われたらしいな。
壊れた車の山の上に現れたのは、さっきの小柄の女性だった。
「あぁテメェには関係ないだろうが。」
ホントにコイツはバカなんだな。
礼儀というものを知らないのか。
「はい、関係はありません。」
小柄な女性の後ろから、黒いスーツを着た男が現れた。
にしてもデカいなあの人、小柄な女性の後ろにいるせいかもしれないが。
「でもここは校長先生の土地ですから。」
だから注意するってことか。
コイツはあれだな、自分より偉い人間をヨイショするタイプだな。
しかしあの校長、こんな場所の所有者なのかよ?
「にぁははは~~~、この子たちって例の子ですか?」
「そうだよぉ~~~~」
さらに小柄な女性の後ろから、動物の耳を付けた女が現れた。
そして小柄な女性は女の頭をなでながら言った。
「だから、どうしたって言うんだよ?」
コイツって普通じゃなくて、ただのバカなんじゃないのか。
「おじい様がなんて言ったかは知らないけどさ、私は君たちがやろうとしている事に興味
あるかもね。」
女は意味の分からない事を言った。そして小柄な女性は何か投げた。
「んっ、なんだこれ?」
俺は彼女の投げた物を取った。
そして何かと彼女に問おうとしたら、そこにはもう誰もいなかった。
「なんだったんだ、アイツ等。」
知らねえよ、こっちが聞きたいよ。
それにあの小柄な女性が投げた物って。
「おいお前等、あんな奴等と知り合いなのか?」
剣の質問は俺等にとっては不思議に聞こえた。
あんな奴等って……………この二人は、アイツ等を知ってるのか?
「知り合いってほどじゃない、よな。」
「あぁ。」
俺は改めて彼女が投げた物を見た。
限りなく黒と言っていいほどの、丸い形にⅠと書かれたマークのバッジ。
Ⅰって事は一年の証だよな?
でも丸ってなんだっけ?
「んっ。」
剣はジッとバッチを見つめた。
何か知っている様子で。
「これって、このバッチって…………。」
パラパラパラァ~~~~っと、おもむろに生徒手帳を開き始めた剣。
この本を読んでいるあなたたちの時代がどうかは知らないけど、この時代の生徒はバッチを付ける義務らしい。
俺は付けた事がないからわからないが。
そしてそのバッチは、その生徒のランクを表すのだ。
種類は無限と言ってもいいくらいあるらしい。
だいたいのランクは生徒手帳に書かれてるらしい。
「あった!!!?????」
俺は、俺等は驚愕した。
何にかって?そんなの決まってるじゃないか。
生徒手帳に書かれてたのは、ただ一言だ。
・属性は黒。そして形は丸。それらが意味するのはブラックリスト。
ただそれだけだった。
普通ならもっと詳しく乗ってるものだよな。
ブラックリストって、どうゆう意味だし?
そしてこれは俺が気づいた事だ。
このバッチの意味の隣には。
・属性は金色。そして形は星。それらが意味するのは生徒会委員。
あの女、生徒会なのかよ?
「バッチは四つあるな。」
「四つある。」
「あぁ。」
「えっ。」
ここにいる人数は四人。
そしてバッチの数もちょうど四個だ。
つまりあれか、これを付けろって事か?
そして俺等のランクは、この意味不明なブラックリストなると。
「まぁ~おもしろそうだから、付けてみるか。」
そんな簡単な話じゃないだろうが。
浪は制服の胸元に付けた。
なぜか誇らしげに、たぶんカッコいいとか思ってんだろうな。
「俺等ってあの生徒会に、目を付けられたのか?」
あの生徒会っていうよりは、あの小柄な女性な気がするが。
「あの女って、名前なんなだよ?」
「「…………………」」
英介と剣は黙り込んだ。浪は仕方ない、入学式に出てないから答えられない。
でもコイツ等はおそらく入学式に出ているはずだ、だったら生徒会の野郎共の話を聞いているはず。
「俺等が知ってる訳ないだろうが。」
ですよね。
俺はなんの期待をしていたんだろう?
この普通じゃない奴等が聞いてるわけないか。
「まぁ別にいいんじゃないか、あんな変な奴等。」
俺等がアイツ等よりだいぶ変だと思うんだが、あれが生徒会ってもんなんだろう。
俺等はその後、バッチを付けるか付けないかで口論(ケンカ)して、最終的に付けることになった。
なんでその内容をちゃんと言わないかというと、あまりにもひどかったからです。
そして結局その後、俺等は少しだけ使えそうな物を探しただけだった。
なんでかというと、口論(ケンカ)でかなり時間を使ったからである。
「なぁ大地。」
隣で一緒に歩いている浪が、唐突に話しかけた。
「あぁ、どうしたよ?」
俺は空を見上げていた。
空は暗く、数十個の星がキラキラと輝いていた。
当然と言ってもいいんだが。
ここはかなり田舎だし。
「マジで世界…………………変えような。」
浪は笑いながらそう言った。
俺はコイツとまだ知り合って間もない、コイツはバカでアホで、そしてとにかく普通じゃない。
でもこれだけはわかる、今言った言葉は本気だ。
「当ったり前だろう、何のために俺等が集まったと思ってんだよ。」
「そうか、そうだよな。」
男はポケットから煙草の箱を取り出し、二本のタバコを取った。
「ほれ、吸えよ。」
…………やっぱりコイツはバカだ。
「いや、遠慮するって。」
「遠慮するなって。」
タバコを無理矢理俺に渡した浪は、タバコを咥え火を点けた。
「フゥ~~~~~」
深々と煙を吐き出す浪を逆手に、俺は一本のタバコをジッと見つめた。
マキシマムブレンド・オールドエイト。
青色の紙にそう書かれていた、意味はよくわからないが、なんか高そうだな。
「ほら。」
ライターを渡してきた。
吸えってか、俺にマジで吸えって言うのかコイツは。
「まぁ気楽に、一回だけ。」
どっかの特番で聞いたことあるようなセリフを、平然と言ってしまうコイツはやはり普通
ではない。
「……………」
たぶん俺はコイツの、このアツい視線が嫌いらしいな。
「はぁ~~~~」
作品名:「 俺等の青春は LEGND になった 」 1 作家名:東からの訪問者