「 俺等の青春は LEGND になった 」 1
「普通に飽きてるんだろう? この世界に不満を持ってるんだろう?」
男は周りの嫌な気配に見向きもせず、話を続ける。しかし何だろう?
クソみたいな生徒とは別に、他の視線を感じる気がする。
「この世界は普通に変わってしまった、昔はどの国も一番を目指して奮闘していた。だが
あの条約のせいで…………。」
男は言葉に詰まった。
条約、それは俺が生まれる前の……まだ世界中が戦争していた時代に、結ばれた条約だ。
条約の名前はWEP(世界平等主義)、これによって世界は普通になった。
普通の奴等にとってはいい事なんだろうな、世界中何処の場所でも同じ医療、設備、治
安。
どっかのお偉いさんが決めた条約せいで、俺は迷惑している。
「お前……俺と、この世界を変えないか?」
男は言った。俺の方をジッ~~と見ながら、手に持っていたタバコを落として。
俺は世界が一瞬止まったように感じた。実際に止まってたりして。
「俺はこの世界が………今のこの世界が嫌いだ。」
「あぁ、わかってる」
「…………」
考える必要はなかった。
コイツとなら変えられる、この国をこの世界を。
「どうやら決まったようだな。」
男は俺の肩に腕をかけて、笑いながら言った。
「くさっ」
小声で言ったつもりだ。
どうして登校初日の制服から、タバコの臭いがするんだよ。
「なんだとこの野郎。」
今になってみればコイツのやっていた事は、あの日までにやったバカみたいの事と、タバ
コを吸っていただけだな。
「お~~~い新入生たち、早く集まれ。」
おそらくこの高校の先生だろうな、俺の予想は体育教師。
明らかに格好があれだもん。
俺は当然向かった、確実に俺等二人を呼んでいたし。
気が付けば、周りには誰もいない
「おいおい何処へ行く?」
男は俺の服を引っ張り、引き止めた。
「えっ?だって呼んでるじゃん。」
男の頭の上には?マークが出ていた。
「あんな奴等といたらバカになるぞ。」
お前がバカだっつうの。
いくらあそこにいる生徒たちが普通だからって、入学式くらい出ようぜ。
「じゃあどうするんだよ?」
「ん~~~~どうする?」
質問に質問で返してきた男は笑っていた。
…………そういえば、コイツの名前はなんなんだろう?
聞いてみたいが、いまさらな気もする。
「どっかで暇でもつぶすか。」
「……………」
「お~~~~~い、聞いてるか?」
「え、あぁ」
ついコイツの名前が何か考えて、ぼぉ~~~としていた。
「……」
男は上の方を見ていた。
上といってもほんの少し頭を上げていた。
俺もそれに便乗して、男の向いている方を見てみた。
「………………」
屋上……いや違うな、その後ろにある山を男は見ている。
確か夢見山だっけか?
昔々、それは江戸などと言われていた時代だ。
この辺りはこの夢見山しかなかった、特にこれといった特産品もない地味な場所だ。
しかし夢見山を中心に地震が起き、そのおかけで何かがなんかなったらしい。
詳しい事は知らない、実際その場にいた訳じゃないし、仕方ないじゃん。
その夢見山の頂上、いや麓か………どちらともいえない場所に、一つの小屋みたいのが建
っていた。
そしておそらくコイツは、その小屋を見ていた。
嫌な予感がするのは、俺だけだろうか?
「あそこにある小屋、行ってみないか?」
予想が的中しました。
★
「大地、どこ行ったんだろう?」
★
俺等、つまりは俺とこの男は今山登りをしています。
初日目にして先生の命令を無視して、挙句の果てに入学式もサボってしまった。
ゆっくりと小屋を目指してる俺等。
「結構高いんだなこの山。」
「だな。」
高いよ!!!!だって、最初のところにあった看板に。
この夢見山は標高809メートルって、書いてあったし。
この辺りから下の方を見ると、さすがに高く感じるな。
俺はフッと振り返ってみた。
学校は遥か彼方にあった、なんだか黒く小さい点が動いていた。
おそらく入学式が終わり、新入生が外に出てきたのだろうな。
本当なら俺と浪もあそこにいただろうな。
……………絶対に怒られるな、先生と………あと麻奈美に。
アイツ、以外に怒ると恐いんだよな。
あのお母さんも結構恐いし、たぶん遺伝なんだろうな。
よくあのお父さんはあの人と結婚したんだろう?
そろそろ山の中心に来たところだろうか。
俺等は黙って歩いていた。
空気が薄くなっているからだろうか、沈黙が続く。
「なぁ~。」
男は俺の前を歩いていたが、こちらを振り向いてきた。
「お前って、なんて名前なんだ?」
「……………」
コイツも俺とおんなじ事で、悩んでたのか?
「………坂本 大地だけど。」
「ふ~~~~~んそうか、俺は針霧 浪だ。」
思い立ったように自分の名前を言った浪。
どうやらコイツなりに気を利かしたつもりらし。
「これからよろしくな。」
浪は手を差し伸べた、その手を俺はゆっくりと握った。
俺はコイツの手を握った瞬間感じた、間違えない……………コイツといれば絶対に俺の人生は変わる。そして俺は確実にその階段を上ってる。
「あぁよろしくな。」
俺と浪は握った手をギューと握り笑った。
そして自然と腕を組み、そしてその自分の反対側にある自分の手を、お互いの胸にぶつけ
た。
「イテ~~~よ。」
「こっちのセリフだっつうの。」
俺等はその後、決して普通ではありえないくらいの速さで走った。
何故だかはわからないでも走らずにはいられなかった。
そして俺も浪も、小屋に着くまでお互いの顔を見なかった。
「「ハァハァハァ」」
俺等は息が切れていた。
空気が少ないせいか、小屋の目の前で俺等は倒れていた。
しかしコイツ、タバコ吸ってるわりに足が速い。
俺だって決して遅い訳ではない、なのにコイツはその俺とほぼ同じ速度で走っていた。
「着いたな。」
「あぁ。」
息が切れていて、若干声が震えていた。
それは俺も同じだったが。
ここに来るまでに約二十分掛かった。
正確な時間は分からないがたぶんそのぐらいだろう。
近くで見ると以外とデカイ小屋だった。
だけどだいぶ手入れをされなかったらしい、かなり汚れていた。
「結構デカいな。」
「俺の家よりデカいかも。」
とんでもない事を言った浪はさておき、コイツはどうしてここに来たかったんだろう?
こんな何にもない小屋の、何処に引かれたのか。
浪は小屋の入れ口らしき場所から入ってった。
入れ口と言えるかは別として。小屋の扉はどっかに外れてったらしい。
おかげで中はボロボロだ。
「まだ使えるな。」
浪は笑顔で不吉な事を言った。
まさかコイツ、いやまさかそんな事ないよな、いくらコイツでもそれは………。
だがコイツは、普通の人間ではなかった。
「ここに俺等の秘密基地を作るぞ。」
やっぱり、言うと思ってたよ。お前は予想を破らない男だよ。
「なんでだよ?」
作品名:「 俺等の青春は LEGND になった 」 1 作家名:東からの訪問者