顔 下巻
正直、ここのところ喰ってはいるが・・あれは酷いよな。
ありゃぁ、メシじゃないぜ・・エサだ。
だが、点滴喰らうよりは・・マシかな。
大川は吊られ笑いをして見せたが、
わざとらしさは隠せなかった。
「点滴が嫌で・・メシ喰ってるのか?」
大川は噴き出した。
ふっと吹き出す一之瀬は笑い声を出すのをやめた。
そうさ。
点滴剤の中に、睡眠誘導剤のようなものが入ってるよな。
あぁぁ、眠くなるんだぁ・・ふぅぅぅぅっとな~。
すると・・奴らが現れる・・。
オレがさ。オレが眠り込むのを待っているんだ、奴ら。
壁の中とかさ、天井とかさ、床・・ベッドの中にも奴らは
入り込んでくるんだ。
大川は以前、こういう輩を見たことがある。
薬物にはまった若い青年だった。
妄想と幻覚、幻聴。
そして自傷行為。
「なぁ、違法な薬物に手を出したことあるかい?」
一之瀬は笑い出した。
ハハハ、そうきたか・・そうだよなぁ~。
なぁ、ここに来た最初の日に身体検査したじゃないか。
尿検査の結果・・出てないのかぃ?
小山は身体検査の結果書類を見直した。
「薬物の反応は・・ありません。
コイツ、変な演技してるだけですよ。」
「演技?」
訝しがった大川が書類を見ながら云った。
この言葉に、一之瀬は、顔を上げた。