顔 下巻
マジックミラー越しに見ていた中井は、
取調室に入ろうとしたが、ドアが開かない。
ドアの取っ手の冷たさに、驚き、必死に開けようとしたとき。
中から、ガラスの割れる音がして。
刑務所内にサイレンが鳴り響いた。
中井はドアを蹴破って取調室に入ると。
流れ出す冷気と、堪らなく鼻を突く異臭がして。
あまりの異臭で、臭覚どころか視覚までも奪われ
中井はその場で倒れた。
駆けつけた刑務官たちも、あまりの冷気と悪臭に、
すぐには取調室には近寄れなかった。
ようやく10 分ほどして、刑務官のひとりが取調室に入り、
その合図をしてサイレンが止められた。
取調室は、鮮血に塗れていた。
老刑事も女刑事も、鮮血を浴びていた。
女刑事は床で気を失っていたため、担架で運び出された。
老刑事は取調室中央の机の前で、椅子に座り、
眼と口を大きく開いたまま失禁していた。