顔 下巻
一之瀬は大声で叫んでいる。
「いったい、何が起こっているんだ!おぃっ!」
体を拘束衣で拘束されてなお、大きく体をゆすりながら
背後に近づいている脅威を感じていた。
「オレを殺しに来たのか?誰だ?」
身動きの取れない一之瀬は、天井を仰ぎ
気が触れたかと思われるほど高らかに笑った。
「誰だ?オレを殺しに来たのは?おまえか?」
違うのか?!
誰だ!
いったい誰なんだ!
一之瀬は、今度は大声で泣き喚かんばかりの叫んだ。
誰に向かって話しているのか、大川にも小山にもわからなかった。
「じゃぁ、誰がオレ、このオレを!」
「やめろ!やめてくれ!」
「顔を盗んだのはオレ、オレだけじゃないだろっ!」
次のひとことは、最後までつづかなかった。