顔 下巻
ここは建物の三階だ。
なのに・・窓ガラスの向こうに・・無数の視線の無い視線が。
窓ガラスに張り付いて・・こちらを覗きこんでいる・・・。
いや、窓ガラスをコツいている・・・。
大川は、それでも事態を冷静にとらえようと
必死に正気であろうとしたが。
ゴツゴツと窓ガラスを叩く音は次第に強くなり
拘束衣で包まれた大川の顔をした一之瀬も、只ならぬ気配を感じた。
「どうしたんだよ!なにがおこっているんだよ!」
大川は何も言い出せなかった。小山は動転していた。
大川の出来ることといえば。
必死に声を上げようとしたがそれすら出来ない。
体は硬直し、感じたことも無いような冷気に、凍えるばかり。
小山は、床で気を失うのを必死で耐えている。