顔 下巻
「もう一度聞くが・・・奴らってなんだ?」
なんだろな、影っていうかぁ~。染みっていうかぁ~。
なんか薄ら暗いんだよな、ボゥーっとしてやがって。
顔が無いくせに、嘲り笑うように、じっとこちらを見てやがるんだ。
四六時中、無い筈の目に見張られているってかんじかな。
「それが誰だかわかるのか・・ロザンナさんだとか、二之宮だとか、三島だとか」
あぁ。わかるよ。
「なぜ彼らが。“奴ら”になったのか?」
気まずい空気が流れていた。
冷たい冬の空気より、さらに冷たい冷気が流れ込んだような
ピンっと張り詰めた緊張感が漂った。
「おまえが、“奴ら”にしたんだろ?」
大川の一言に、一瞬ひるんだ大川の顔をした一之瀬は、一度瞬きをすると。
笑い始めた。
そんなこと、ささいなことだ。
肉体を遊離したあいつ等が、オレをさ。このオレをさ。
殺そうとしているんだぜ?
だから、保護してくれよ。
ハハハ、どうせこんな話、誰も信じやしないさ。
よくてオレ、このオレはさ。精神病院送りだ。